要配慮個人情報とは?

前回は、個人情報の取得にあたってご注意いただきたい点を御説明しました。

前回の記事に基づき、個人情報保護法17条をご覧になってくださった方は、2項の存在に気づかれたと思います。

第十七条 
2 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならない。
一 法令に基づく場合
二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
五 当該要配慮個人情報が、本人、国の機関、地方公共団体、第七十六条第一項各号に掲げる者その他個人情報保護委員会規則で定める者により公開されている場合
六 その他前各号に掲げる場合に準ずるものとして政令で定める場合

「要配慮個人情報」の定義は、2条3項に記されています。

第二条 
3 この法律において「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。

ここまでお読みになると、会社で健康診断を担当していらっしゃる方はドキッとするでしょう。
「仮に、会社で実施している健康診断の結果表に、病歴が載っていたら、本人の同意なく要配慮個人情報を取得してまったことになるのではないか?」と不安になったかも知れません。あるいは、「病歴でなくとも、『要再検査』等と書いてある結果表も受け取っていいものか……?」などと疑心暗鬼になったかも知れません。

確かに、「政令で定める記述等」には、病歴や要再検査など、健康診断の結果も含まれます(個人情報保護法ガイドライン(通則編)2-3)。

しかし、御安心ください。会社の健康診断は、労働安全衛生法に基づき、会社の義務として行われるものです。
したがって、その結果を会社把握することは、「法令に基づく場合」にあたるので、違法ではありません(個人情報保護法ガイドライン(通則編)2-3 )。

さて、皆様が「要配慮個人情報」に触れる可能性のある場面としては、採用面接における履歴書が挙げられます。
採用面接においては、賞罰欄のある履歴書を受け取ることもあろうかと思います。
賞罰欄のうち、「罰」の欄については、刑事罰を受けたことが記載されている場合があります。すると「犯罪の経歴」が記載されていることになるため、その履歴書は、「要配慮個人情報」ということになります。
もちろん、受験生から受け取る段階では、その受験生について「本人の同意」の同意があるといえるため、仮に、罰の欄に記載があっても問題はありません。

しかし、受け取った後の取り扱いについては、厳重な規制があります。
後日お話できると思いますが、現時点では、「本人の同意がない限り、その履歴書を第三者に提供してはならない。」程度に抑えておいてください。

もちろん、要配慮個人情報ではない個人情報も、安易に第三者に提供してはいけません。しかし、実は、いろいろ例外があって、本人の同意なくてして第三者に提供できる場合も、少なくないのです。

しかし、要配慮個人情報については、その例外が厳しくなっています。もし、罰の欄に記載がある履歴書を受け取った場合には、注意して管理してくださいますよう、お願いいたします。