相続法が変わります12
「相続させる」遺言でも登記必須
【899条の2】
l 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
1 ひとこと解説
これまでは、「相続させる」遺言の場合(=遺産分割の指定)、登記がなくても第三者に対抗できるとされていました。
しかし、新法では、法定相続分を超える分は、登記がないと第三者には対抗できないことになったのです。つまり、登記しない間に、こっそり売られてしまうと、所有権を失うことになります。
2 例
Aさんは、Bさんと結婚しており、Cという子どもがいました。
Aさんは、A名義の土地を持っていました。そこで、Aさんは、「土地をBに相続させる」という遺言を作成した後に死亡しました。
その後、Cは、A名義の土地の2分の1をDに売りました。DがA名義の土地の2分の1について登記をしてしまった場合、Bは、残りの2分の1しか所有権をDに主張できないことになるのです。
3 補足
↑の例で、仮にCがA名義の土地全てを譲渡してしまった場合、Bさんは、Cの法定相続分である2分の1はDに主張できません。
しかし、残り2分の1は他人物譲渡なので無効です(厳密にいうと「無効」という表現は誤りですが、ご容赦ください。)。
したがって、BさんはDに「2分の1は無効である」と主張できます。
4 注意
皆さまは、「書類の偽造でもしない限り、土地の登記や売却はできないはず。」と思われるかも知れません。確かに、普通ならば、そんな簡単に土地の登記はできませんし、売ることはできません。
しかし、相続という場面では、注意が必要です。法定相続分で登記をする限り、書類の偽造をしなくても、登記ができてしまう可能性があります。
↑の例でいうと、Cが、Aは遺言を作っていなかった体で、登記申請をすると、Cに持ち分2分の1がある旨の登記ができてしまう可能性はあるのです(もちろん、CがAの遺言の存在を知っていて登記申請をすれば、何らかの犯罪になるとは思いますが。)。
したがって、今後は、速やかに登記をすることが必要です。遺言書を発見したら、すぐに専門家に相談してください。弊事務所でも、司法書士の先生のご紹介が可能です。