相続法が変わります11

遺留分減殺請求の対象となる贈与には期間制限あり

【1044条】
1 贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2 第904条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3 相続人に対する贈与についての第1項の規定の適用については、同項中「1年」とあるのは「10年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」 とする。

1 ひとこと解説

遺留分減殺請求の対象となるのは、相続人に対する贈与については、死亡前10年以内の贈与です。永い分、対象が限定されています。
相続人以外に対する贈与については死亡前1年以内の贈与です。

2 注意

あくまで、1044条は、生前の贈与の話です。
つまり、これまでやってきたように、遺留分減殺請求権とは、死後、遺言書で偏った遺産分割が指定されていた時に、用いることが多いです。
死後については、1044条は適用されませんので、ご注意ください。

すなわち、もし、遺留分減殺請求権が、遺言書による遺産分割・遺贈の場合にのみ対象になるとすると、「遺言書で偏った遺産分割の指定をすると、遺留分減殺請求権を受けて妻が困ってしまう。それならば、自分が死ぬ前に妻に財産を贈与してしまえば良いではないか。」と考える人が出てきてもおかしくありません。このような抜け穴を防ぐために、生前の贈与でも遺留分減殺請求の対象にする条文が1044条です。

3 例

AさんはBさんと結婚し、Cという子がいたとします。
Aさんは、2021年1月、Cが結婚するにあたり、1000万円を贈与した。
Aさんは、2026年1月に死亡した。Bさんは、Cが贈与を受けた1000万円についても、遺留分減殺請求の計算に含まれることを主張できます。

4 補足

 ア 旧法では、相続人以外に対する贈与は1年、相続人に対する贈与は無制限に遺留分減殺請求の対象になるとされていました。
   しかし、無制限だとすると、長すぎるということなので、制限が設けられました。
 イ 施行日前に贈与がなされ、施行日後に相続が開始した場合、新法の附則を読む限り、附則2条しか適用されず、新法が適用されることになりそうです(債権法改正に比べて、附則がものすごく読みづらいです。)。