民法改正講義案11(債権譲渡1)

1 譲渡制限がついていても預金債権以外は、譲渡有効

 【第466条】 
2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)
をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。

【第466条の5】
預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権(以下「預貯金債権」という。)に
ついて当事者がした譲渡制限の意思表示は、第四百六十六条第二項の規定にかかわらず、
その譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人
その他の第三者に対抗することができる。

(1)ひとこと解説

譲渡禁止特約・譲渡制限特約がついている債権でも、譲渡は有効です。

(2)詳細解説

旧法下では、債権譲渡禁止特約を定めた債権を譲渡することはできませんでした。

ただし、譲渡禁止特約につき、善意の者に対する譲渡についてのみ有効とされていました。逆にいえば、譲渡禁止特約について悪意の者に対する譲渡は無効だったのです。

しかし、新法下では、たとえ、譲渡禁止特約につき悪意であっても、譲渡は有効となりました。

(3)補足

譲渡禁止特約がついた預貯金債権 については、旧法と同じく、善意無重過失の譲受人に対する譲渡は無効ということになります。

ただし、最判昭和48年7月19日によると、「銀行を債務者とする各種の預金債権については一般に譲渡禁止の特約が付されて預金証書等にその旨が記載されており、また預金の種類によつては、明示の特約がなくとも、その性質上黙示の特約があるものと解されていることは、ひろく知られているところであつて、このことは少なくとも銀行取引につき経験のある者にとつては周知の事柄に属する」とされています。

銀行取引につき経験が者ものが、預貯金債権の譲渡を受けることは、ほぼ考えられません。したがって、事実上、預貯金債権の譲渡は無効となります。