民法改正講義案6(賃貸借4)-住めなくなった分だけ当然減額-

4 一部住めなくなれば、当然減額される

【第611条】
1 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
2 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。

(1)ひとこと解説

理由はどうあれ、貸家・貸部屋の一部が使えなくなった場合は、店子から大家に請求するまでもなく、家賃は減額されます。

(2)詳細解説

理由の如何を問わず、借りている部屋の一部が使えなくなった場合には、家賃は、使えなくなった分に応じて、当然に減額されます。旧法では、請求しないと減額できませんでした。

したがって、一部使えなくなっても、店子が、この条文があることを知らないまま、元の家賃を支払い続けた場合はどうなるでしょうか。当然に家賃は減額されるということなので、店子は、時効が完成しない限り、大家に対して家賃の返還請求ができるということになると思います(私見)。

なお、もし、一部住めなくなった結果、そこを借りている意味がなくなった場合には解除もできるようになりました。

(3)例

2Kのアパートを借りている際に、1部屋が雨漏りで使えなくなった場合、店子が請求しなくても家賃は当然に減額される(2~4割くらい減額されるでしょう。)。

しかも、当初、ルームシェア目的を大家に告げ、大家も承諾して2人で住んでいた場合はどうでしょうか。ルームシェア目的が達成されず、借りる意味がなくなったといえるので、全部解除できことになります。

(4)補足

なお、条文を再度読んでみてください。「賃借人の責めによらない場合には」など、例外規定がありません。つまり、一部住めなくなった原因が、店子(賃借人)にあっても611条は適用されるのです。

たとえば、店子が厨房付きの店舗を借りていたところ、店子の失火で厨房部分が焼失した場合を考えてください。厨房付きの店舗を借りる以上、店子は、飲食業をやっていたはずです。厨房が焼失しては、飲食業を続けられません。したがって、借りる意味がなくなったので、賃借人の方から全部解除できる。

ただし、解除できるというだけです。焼失させた以上、損害は賠償しなければならなりません。

旧法では、賃借人に帰責性がない場合に限り、解除できることになっていたのです。