民法改正講義案5(保証7)-利息の増大だけは防ぐ-

7 期限の利益喪失の事実は保証人に伝えなければならない

【第458条の3】
1 主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から二箇月以内に、その旨を通知しなければならない。
2 前項の期間内に同項の通知をしなかったときは、債権者は、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から同項の通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができない。
3 前二項の規定は、保証人が法人である場合には、適用しない。
(1)ひとこと解説

主債務者(=お金を借りた人)が滞納を繰り返し、債権者(=お金を貸した人)が一括払いを請求できるようなった場合、一括払いできるようになってから2か月以内に、個人の保証人に通知しなければなりません。

(2)詳細解説

大金を借りた場合、その大金を一括で返す約束をすることは稀です。ほとんどの場合、分割払いで返すでしょう。たとえば、100万円を借りた際、「毎月2万円ずつ5年間で返す」という分割払いの契約をします。つまり、本来は一括払いをしなければならないところ、分割払いをすることによって、返済期限を延ばしてもらうのです。

この、返済期限を延ばせる状態を「期限の利益」といいます。しかし、大抵の契約では、「何回か滞納したら、一括払いをしてもらう」という条項も入っています。滞納を繰り返した結果、一括払いをしてもらう状態になることを、「期限の利益喪失」といいます。返済期限が延ばせるという利益を、失うというイメージです。

大抵の条項には、「期限の利益を失った場合の利息は20%とする」など、通常よりも高めの利息が設定されています。しかも、この利息は、一括払いの金額にかかってきます。

そのため、いったん期限の利益を失うと、元本を一括で払わなければならないうえ、利息も増えるという恐ろしい状況になります。

それでも、主債務者はまだ納得できます。自分の蒔いた種ですし、少なくともお金を借りるという利益を得ています。しかし、保証人は、一円もお金を借りていないのに、責任だけ負わされる過酷な立場です。

そこで、せめて利息だけでもなんとかなるように、お金を借りた人が期限の利益を失ったら、保証人には通知をしなければならないという条項ができたのです。

通知を受けた保証人としては、主債務者に連絡を取るなり、その時点でとりあえず可能な限りお金を返すなり(お金を返して元本が少しでも減れば、利息の増大にブレーキがかかります。)、少しでも対策ができるというわけです。

(3)例

貸金業者は、期限の利益が喪失されても、利息目当てで、時効ギリギリ(5年)まで訴えないことが多いです。そのため、5年分の利息が過大になることも珍しくありません。しかし、新法では、2か月以内に通知する必要が出てくるので、利息が過大になることだけは防げる可能性がありそうです。