民法改正講義案4(売買9)-買主がリスクを負うのはいつから?-

9 引き渡しか、受領遅滞になれば、買主がリスクを負う

【第五百六十七条】
1 売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない。

2 売主が契約の内容に適合する目的物をもって、その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主がその履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が滅失し、又は損傷したときも、前項と同様とする。

(1)ひとこと解説

引渡しを受けた後に、売主・買主のいずれも落ち度なく、目的物が消失した場合には、買主は代金を支払わなければいけません。

(2)詳細解説

引渡しを受けるか、引き渡しを受けたものの受領を拒んだ場合以降に、売主・買主のいずれの落ち度ものに、目的物が消失した場合、買主は代金支払義務を負うことになります。旧法では、引き渡しや受領を拒むよりも前、契約を締結した日以降に目的物が消失した場合には、代金支払義務を負うことになっていました。

(3)例

2030年1月31日、売主は、静岡市において、東京の一戸建てを、買主に対し、1億円で売買する契約をしたとします。引渡し(鍵の受け渡しなど)は、2030年2月14日とされました。2030年2月14日、買主は一戸建ての引き渡しを受けました。2030年2月15日、東京の一戸建ては、第三者の放火により全焼しました。

この場合、新法では、引き渡し後である以上、買主は代金支払義務を負います。

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。