民法改正講義案1(時効3)-交通事故の人損の時効は何年?-

前回は、不法行為の時効は、原則3年と申し上げました。しかし、さらに例外があるので、ご紹介いたします。

3 不法行為人損は5年・債務不履行の人損は最長20年

【第724条の2】
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする 。
【第167条】
人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。
(1)ひとこと解説

不法行為(交通事故など)による人の生命身体に関する損害賠償請求権については5年となりました。
債務不履行(安全配慮義務違反など)による人の生命身体に関する損害賠償請求権は、最長で権利行使が可能な時から20年ということになりました。

(2)詳細解説

ア 交通事故をはじめとする、不法行為のために、命を失わされたり、ケガをさせられた場合において、その損害賠償請求権は5年で時効となります。そうすると、交通事故で、物損と人損の両方が発生した場合、物損の時効は3年・人損の時効は5年ということになります。

イ 債務不履行による生命身体損害というのは、イメージしづらいかも知れません。たとえば、勤務先の会社の安全配慮義務違反で体調不良になった場合、会社に対し、体調不良から最長で20年間、損害賠償請求できる可能性があります。会社が従業員と雇用契約を結んだ場合、会社には、従業員を安全に働かせる契約義務も発生すると考えられています。

たとえば、Aさんが、12年前に勤務中に体調不良になったものの、当時は原因が分からなかったとします。今年になって、会社の安全配慮義務違反によるアスベスト被害であることが分かったとしましょう。この場合、166条しかないと、12年前が起算点となりかねず、損害賠償請求ができない場合がありうるのです。しかし、167条があるおかげで、現在でも請求が可能になります。

【第166条】
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき