相続に関するQ&A7~相続放棄と保証人は別~

Q 昨日の記事を見ました。私は、親が住んでいたアパートの保証人になっていました。そして、親が死亡したので、相続放棄をしました。昨日の方とは結論が異なるのでしょうか。

A 全く異なります。アパートの保証人である以上、あなたには、アパートの片付けをする義務がある可能性が高いです。また、未払賃料があれば、支払義務があります。

Q 分かりました。未払賃料を支払う際に、何か注意事項はありますか。

A 保証人として払ったことが分かるように、あなた名義で領収書を発行してもらってください。

Q 未払賃料を支払う以上、相続放棄もできないということでしょうか。

A アパートの保証人として支払えば、相続放棄自体は可能です。たとえば、親が、銀行にも借金があった場合、あなたがその銀行の借金の保証人になっていない限り、相続放棄をすれば、銀行の借金の支払義務は負いません。

【解説】

アパートの保証人という場合、通常は、アパートに関する一切に関し、責任を負うという契約になっていることが多いです(稀に、賃料に限定して保証する契約を目にしますが、本当に稀です。)。

そして、店子(賃借人)としての義務と、保証人としての義務は別物とされています。

つまり、相続放棄をすることによって、親が負っていた、店子としての義務からは解放されます。しかし、相続放棄をしても、保証人としての義務からは解放されません。

そのため、相続放棄をしても、保証人としての義務である、片付けや未払賃料からは解放されないのです。
したがって、アパートの保証人であれば、片付け義務はもちろん、未払賃料の支払義務も発生します。

ただし、未払賃料を支払う場合には、保証人として支払ったことが分かるよう、あなた名義での領収書を発行してもらって下さい。大家さんからは、親名義の領収書を提示されるかも知れませんが、あなた名義にしてもらってください。

というのも、もし、保証人として未払賃料を支払った場合、他に法定相続人がいれば、その法定相続人に対し、法定相続分に応じて支払を求めることができるからです。これを「求償権」と言います(厳密にいえば、事前求償権があるのではないかという御指摘もありましょう。ただ、本記事では、イメージしやすいように「未払賃料を支払った場合」と記載いたします。)。

たとえば、あなたから見て父親が死亡したとして、法定相続人が母親・兄・あなただとします。
そして、あなただけが相続放棄をした場合、法定相続人は母親と兄です。
この時に、あなたが、父親のアパートの保証人として未払賃料を支払った場合、母親に2分の1、兄に2分の1の支払請求ができます。
そのため、「父親のアパートの保証人として未払賃料を支払った」ことを立証するためには、あなた名義の領収書が必要なのです。

また、支払義務があるのは、保証人になっている部分だけです。もし、アパートの保証人になっているのであれば、アパートに関することだけです。他の借金については、その借金の保証人になっていない限り、相続放棄をすれば、支払義務は負いません。御安心ください。

ということで、相続放棄をしても、保証人になっていれば、また結論が変わるというお話でした。