弊所FAQ13~処分保留釈放とは?~

Q 先日、某芸能人の方が「処分保留で釈放された。」というニュースを見ました。この処分保留釈放とは何ですか?

A 検察官による終局処分(起訴や不起訴)がなされないまま、釈放されることを言います。

Q 何も結論が出ていないといういことですね。では、なぜ、処分保留釈放で世間がざわついているのでしょうか。

A 処分保留釈放の場合、不起訴になる可能性の方が高いと思われるからです。

【解説】

逮捕・勾留された某芸能人の方が、処分保留で釈放された旨の報道がなされました。

ここでいう「処分」とは、検察官がする終局処分のことを指します。
終局処分を大雑把にいうと、不起訴処分か起訴を指します(「不起訴処分」とはいうのですが、「起訴処分」とは言わないようです。)。

したがって、処分が保留ということは、不起訴か起訴かの判断が保留状態であるということになります。
つまり、不起訴か起訴かを保留したまま、釈放されることが処分保留釈放です。

よって、不起訴とも決まっていない以上、釈放後、捜査が進み、ある日突然、検察官から呼び出されたり、はては、起訴されることはありえます。

実際、私の依頼者である被疑者の方が処分保留釈放され、後日、その被疑者の方から「突然、起訴状が届きました。相談に乗って下さい。」というお電話をいただいたことがあります。

しかし、処分保留釈放後に、起訴されることは稀だと思います。
確かに、処分保留釈放後の起訴率に関する統計は無いようです。ただ、私の経験からすれば、処分保留釈放後に起訴されたのは、上記の1件だけです。

つまり、処分保留釈放されると、不起訴になる確率が高いと思われます。

なぜでしょうか。私の見解は「釈放するまでに起訴できるほどの証拠が集まらなかったということは、長い時間をかけても証拠が集まりにくいから。」です。

そもそも、以前申し上げたように、逮捕は、逃亡の恐れか、証拠隠滅の恐れがある場合に、可能とされています。

つまり、逮捕しないと、その被疑者が証拠隠滅をし、起訴できなくなってしまうかも知れない場合に逮捕できるのです。逮捕しなくとも、証拠収集でき、かつ、逃亡しそうにない場合には、逮捕してはいけません。
実際、一回も逮捕を経ずに捜査が進み、起訴される例は決して珍しくありません。

このように、逮捕とは、被疑者に邪魔をされることなく、一気に証拠収集が可能になる機能があると期待されているわけです。たとえば、被疑者から「じっくり」話を聞いたり、関係者から話を聞いたり、家宅捜索をしたりすることもあるでしょう。

一気に証拠収集ができる状態になったにも拘らず、起訴できるほどの証拠が集まらなかった場合が、処分保留釈放といえます。

もちろん、理論上は、上述のとおり、処分保留釈放後も、長期間捜査をして、証拠収集をし、起訴に至る例もあり得ます。
しかし、一気に証拠収集ができる状態にも拘らず、起訴できるほどの証拠が集まらなかったということは、長期間捜査をしても証拠が集まらないことの方が多いのでしょう。

そのため、処分保留釈放の場合は、最終的に不起訴になることが多いという印象です。

ちなみに、逮捕された時には大々的に報道されても、不起訴になった場合の報道は小さいことが多いです。

たとえば、新聞の場合、逮捕された時は半ページくらい使って大々的に報道したのにも拘らず、不起訴の場合の報道は、訃報欄と見紛うくらいの数センチ四方の記事になっていることは珍しくありません。
「不起訴になった以上、できる限り触れない方が、不起訴になった人のためになる。」という価値観なのかも知れませんが、私は違和感を覚えます。

ということで、処分保留釈放に関する話でした。