ハンコについて本気出して考えてみた13~でもハンコ付き契約書は重要~
これまで、契約書の細かいところで、意味が全く変わってくる例をお示ししました。
そのために、「契約書って実は怖いのではないか?」という印象を持たれたかも知れません。
しかし、契約書が存在しないことの方が、もっと怖いのです。
たとえば、あなたがDさんに、パソコンを50万円で売る約束をしたとします。
そして、あなたがパソコンを無事に引き渡したとしましょう。
この時、もしDさんが50万円を支払ってくれない場合、どうなるでしょうか。
もし、「パソコンを50万円で売る」というハンコ付き契約書があれば、あなたは契約書に基づいて50万円を請求できます。
しかし、契約書がないと、Dさんはしらばっくれるかも知れません。
「あのパソコンはもらったものだ」と言い出すかも知れません。
あるいは、「確かに買ったが、30万円という約束であった。」
などと言い出すかも知れません。
まあ、「お金が入ってこないくらいで済むなら、Dさんと縁を切れば良い。」とお考えになる方もいらっしゃるかも知れません。
しかし、契約書がないことの恐ろしさは、これでは終わらない点です。
たとえば、Dさんから「パソコンの調子が悪い。修理してほしい。」「パソコンが壊れたために仕事ができなくなった分を補償してほしい。」という要求が来るかも知れないのです。つまり、こちらから縁を切るだけでは済まない事態に陥るリスクがあります。
もちろん、契約書がない以上、法律で何とかなる可能性はあります。特に、「パソコンが壊れたために仕事ができなくなった分を補償してほしい。」は、法律の適用で何とかなるかも知れません。しかし、「パソコンの調子が悪い。修理してほしい。」は、法律を適用しても、なかなか突っぱねることは難しいです。
このような、思わぬリスクを最小限にするのが契約書です。
以前申しあげたように、「自分に有利な取り決めを作り出すかも知れないし、相手に有利な取り決めを作り出すかも知れない。」のが契約書です。契約書によって、自分に有利な取り決めを作りだすと同時に、相手に有利な取り決めの内容を事前に把握することによって、その対策を考えることができます。
たとえば、契約書を作ろうとしたものの、どうしてもDさんが修理にこだわった場合、「修理は1回限りとする」とか、「修理は1年以内とする」などと、落としどころを事前に作っておくことができます。
以上のとおり、やっぱり契約書は大事というお話でした。