Torrent関係Q&A3~開示拒否する?しない?~
Q 私は、BitTorrentを使って、映画をダウンロードしました。その後、プロバイダから発信者情報開示請求書が、意見照会書つきで届きました。「開示を拒否する」という意見で回答した際に予想される流れについて、教えてください。
A ①権利者(著作権者など)が、プロバイダに対して発信者情報開示請求訴訟を提起するでしょう。
②ほとんどの場合、プロバイダは敗訴し、発信者情報(つまり、ダウンロード者の情報)が開示されることが予想されます。
③訴訟に関係する費用が上乗せされて、損害賠償請求されるかも知れません。
さらに、①~③のどこかのタイミングで刑事告訴されるリスクも絶対にないとは言い切れません。
【解説】
プロバイダから発信者情報開示請求書が届く場合、必ず、意見照会書も添付されます。万一、ついていなかったら、添付漏れと思われますので、プロバイダに「意見照会書もほしい」と言っていただいて構いません。
仮に、発信者情報開示に同意する旨の意見を提出すると、あとは、権利者(著作権者など)からの連絡を待って、損害賠償に関する交渉をするだけとなります。
では、開示を拒否する旨の意見を提出したら、どうなるでしょうか。一応、プロバイダからの書類には、「仮に『開示を拒否する』という意見を頂いても、任意に開示することがあります。」と記載されています。
しかし、やはり、開示を拒否するという意見を受け取った以上、プロバイダも開示しないことの方が多いようです。
プロバイダも開示しなかった場合、権利者は、プロバイダに対して、発信者情報開示請求訴訟を提起するでしょう。そして、私の見る限り、ほとんどの場合において、プロバイダが敗訴し、発信者情報が開示されるように見受けられます。
プロバイダが敗訴し、発信者情報が開示された場合は、開示に同意した場合と同様になります。
権利者からの連絡を待って、損害賠償に関する交渉となるでしょう。
ここまで申し上げると、「仮に、映画のダウンロードをしたとしても、発信者情報が開示されない場合に賭けて、敢えて開示拒否をしてみた方が良いのではないか。」という考えが出てくるでしょう。もちろん、そういう考えもあります。
しかし、私は、お勧めしておりません。
開示に同意した場合と、開示を拒否した場合を比較して、不安要素が大きいからです。
まず、通常、弁護士費用は、相手方に請求できません。しかし、発信者情報開示請求が絡むと、弁護士費用の全部ないし一部が、損害として上乗せされることがあります。以前ほど、必ず弁護士費用が上乗せされるという訳ではありませんが、今でも、上乗せの危険はあります。
また、開示を拒否するということは、裁判を経ることになりやすいので、解決までに時間がかかります。
解決までに時間がかかると、依頼者様は、精神的にしんどくなりやすいです。
さらに、プロバイダが勝つ場合でも、2パターンあります。Ⅰ「そもそも著作権侵害ではない。」という理由で勝つ場合と、Ⅱ「プロバイダ責任制限法が適用されない。」という理由で勝つ場合の2つです。
Ⅰの場合であれば、裁判官が著作権侵害ではないと断言した以上、刑事事件化するリスクは大きく下がったといえます。
しかし、Ⅱの場合、著作権侵害か否かは、断言していないことになります。そのため、プロバイダが勝ったからといって、刑事事件化するリスクはそこまで下がっていないといえます。つまり、宙ぶらりんの状態が続くことになります。この状態も、人によってはしんどいでしょう。
以上の理由から、私は、ダウンロードに身に覚えがある場合、発信者情報開示に応じることをお勧めしております。