民法改正講義案9(詐害行為取消2)
2 担保設定でも取消できる場合あり
【第424条の3】 1 債務者がした既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為について、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、詐害行為取消請求をすることができる。 一 その行為が、債務者が支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。次項第一号において同じ。)の時に行われたものであること。 二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。 2 前項に規定する行為が、債務者の義務に属せず、又はその時期が債務者の義務に属しないものである場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、債権者は、同項の規定にかかわらず、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。 一 その行為が、債務者が支払不能になる前三十日以内に行われたものであること。 二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。
(1)ひとこと解説
譲渡や売却ではなく、担保設定でも、詐害行為取消できる場合があります。
(2)詳細解説
担保設定をしただけでは、所有権者は変わりません。したがって、売買や譲渡とは異なります。しかし、担保設定をしてお金を借りた場合、返せなくなれば、所有権を取られてしまいます。たとえば、自分の持っている土地に抵当権を設定したうえで、お金を借りた場合、そのお金が返せなくなれば、土地を失います。
つまり、担保設定というのは、最終的には売買や譲渡と同じ結果を招くことがあります。そこで、担保設定の場合でも詐害行為取消できるようにしたのです。
しかし、ちょっと待ってください。事業を営んでいる方が、資金繰りに困った場合、自分が持っている土地を担保に出して、運転資金を借りるということは何ら非難されることではありません。
そこで、担保設定で詐害行為取消は認められるのですが、認められる条件がかなり厳しくなっているのです。
(3)補足
やはり、破産法の否認の条文とよく似ています。ぜひ、比較してみてください。
第百六十二条 次に掲げる行為(既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為に限る。)は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。 一 破産者が支払不能になった後又は破産手続開始の申立てがあった後にした行為。ただし、債権者が、その行為の当時、次のイ又はロに掲げる区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事実を知っていた場合に限る。 イ 当該行為が支払不能になった後にされたものである場合 支払不能であったこと又は支払の停止があったこと。 ロ 当該行為が破産手続開始の申立てがあった後にされたものである場合 破産手続開始の申立てがあったこと。 二 破産者の義務に属せず、又はその時期が破産者の義務に属しない行為であって、支払不能になる前三十日以内にされたもの。ただし、債権者がその行為の当時他の破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。