民法改正講義案1(時効2)-不法行為の時効は原則何年?-
前回の続きです。前回は、「消滅時効期間は、原則として5年になった」と申し上げました。
今回は、例外にあたるものをご紹介します。
2 不法行為は原則3年のまま・除斥期間は廃止
【第724条】
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
(1)ひとこと解説
不法行為(たとえば、交通事故など)の被害者が、損害および加害者を知ったときから3年間行使しない場合か、不法行為の時から20年間行使しない場合には、消滅時効が完成します。
(2)詳細解説
旧法をご存じの方からすると、実質的には変更がないように見えるかも知れません。
しかし、「不法行為の時から二十年間行使しないとき。」も、新法では時効期間となりました。旧法では、「除斥期間」とされていたので、不法行為時から20年経つと問答無用で権利が消えていました。これに対し、新法では、更新(旧法でいう「中断」)もありうることになりました。
たとえば、Aさんがひき逃げにあったとします。ひき逃げなので、なかなか加害者が分かりませんでした。ひき逃げから19年11か月後にようやく加害者が判明した場合、Aさんは、取り急ぎ、更新や完成猶予の手続きを採れば、ひき逃げから20年を超えても損害賠償請求できる可能性が出てくることになるのです。