静岡市清水区で法律事務所を経営している、弁護士の浅井裕貴です。
ここでは、弁護士が冤罪を防ぐために何ができるのかをご説明いたします。

〇冤罪を防ぐ

・黙秘権のアドバイスと元気づけ

突然ですが、ちょっと想像してください。
あなたは、ある殺人事件の裁判のニュースを見ています。
ニュースキャスターがこう言いました。
「被告人は、逮捕された当初、警察官の前では『私がやりました。』と述べていたにも拘わらず、
今日の裁判では、『私はやっていません。』と述べて、法廷が騒然となりました。」

あなたは、この被告人について、どう思うでしょうか。
「はじめは認めていたのに、裁判になって急に否認するなんて、往生際が悪い」
などという感情を抱かなかったでしょうか。
確かに、そのような感情を持つことは、やむをえません。

なぜでしょうか。
それは、「人間は、わざわざ自分に不利なことを言うはずがない。
自分に不利なことを言うならば、それは真実である。」という思い込みがあるからです。
「一度でも『私がやりました』といった以上、それが真実だ。」と思ってしまうものなのです。

ここまでひどい思い込みはなくても、「発言がころころ変わって被告人は信用できない」
くらいの思い込みをする方は多いでしょう。

しかし、その思い込みを利用し、有罪を立証しようとする側は、
何とかして「私がやりました。」と言わせるような捜査手法を採るようになりました。
別に、戦前の話をしている訳ではありません。今でも同じです。
確かに、戦前のように拷問をするという例は、ほとんど聞かなくなりました。
しかし、長時間の取り調べをしたり、執拗な言葉責めをしたりして、
追い詰められて「私がやりました。」と言わせた例は今でもあります。

これに対抗するには、黙秘権の行使をするしかありません。
少しでも話そうとすると、「私がやりました。」という言葉が出かねないからです。
しかし、黙秘権の行使は相当辛いようです。
人間、全く話さないというのは、それ自体が苦痛です。

そこで、弁護士が、頻繁に被疑者に会い、被疑者の方を元気づけ、
話し相手になって差し上げるということが大事です。
実際、黙秘権を行使している方は、弁護士が会いに行くと、
堰を切ったように話をしてくださいます。

・証拠集めをすることも

「冤罪を防ぐ」というと、無罪の証拠を集めるのではないかと思うのかも知れません。
しかし、弁護士は、警察官や検察官ではないので、強制捜査ができません。
したがって、無罪の証拠を集めるというのは、かなり困難です。
なかなか、テレビドラマやゲームのようにはいきません。

ただ、それでも可能な範囲で証拠集めをすることはあります。
たとえば、私が実際扱った案件は、以下のようなものがありました。
とある犯罪の疑いをかけられて警察に捕まった被疑者がいました。
ただ、その被疑者は、「一切犯行現場に行っていない。仕事で別の場所にいた」とおっしゃいました。

そこで、被疑者が仕事でいた場所と、犯行現場の位置関係を調べ、犯行当日の道路状況も調べました。
調べた結果をもとに「全く道路が混んでいなければ犯行は可能かも知れないが、事件当時の道路状況からすれば、
犯行時刻に犯行現場に行くことは不可能である」と主張しました。
その結果、「処分保留釈放」になりました。

処分保留釈放の数か月後、残念ながら起訴されてしまいましたが、
別の弁護士が引き継いで無罪となりました。
(処分保留釈放になると、弁護士は交代してしまうことが多いのです。)

このように、無罪証拠を集めることも行う場合があります。

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