【判例速報】最高裁・株式交換の買取価格「公正な価格」/東京地裁・キャラクターイラストの著作者人格権ほか計3件(2026年10月6日)

裁判所ウェブサイトの新着裁判例のうち、当サイトの過去の速報で未報告のものは3件です(インターネット関連分野に直接該当するものは0件。ただし1件は被告ウェブサイト上の商品画像の表示が問題となった著作権事件です)。

※裁判所サイトには掲載日(公開日)が表示されないため、裁判年月日ベースで直近の新着分を確認しています。

1 最高裁第二小法廷 令和8年9月30日決定(令和7(許)23)手数料還付申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件

  • 結果:破棄自判(原審:東京高裁 令和7年5月14日決定)
  • 事案:本案訴訟の原告が訴え提起手数料3万6000円を納付した後に訴えを取り下げた。その債権者(抗告人)が、民事訴訟費用等に関する法律(令和4年改正前)9条3項に基づく手数料還付請求権を差し押さえ、取立権の行使として還付を申し立てた。原審は、還付請求権は行使上の一身専属性を有し納付者のみが行使できるとして申立てを退けた。
  • 判断:還付請求権は専ら経済的利益を得ることを目的とし、還付を受けても納付者に不利益は生じず、申立てを納付者の意思のみに委ねる理由はないとして一身専属性を否定。還付の申立ては取立てに必要不可欠な行為で取立ての範囲を超えないとし、差押債権者は取立権の行使として還付の申立てができると判示。抗告人に1万8000円の還付を命じた。高須順一裁判官の補足意見あり。
  • 実務上のポイント:訴え取下げ等による手数料還付請求権が債権執行の対象として実効性を持つことが明確になった。債権回収実務で参照価値がある。
  • 出典:https://www.courts.go.jp/hanrei/97107/detail2/index.html
    判決文PDF:https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-97107.pdf

2 最高裁第二小法廷 令和8年9月30日決定(令和6(許)32)株式買取価格決定に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件

  • 結果:破棄自判(原審:大阪高裁 令和6年9月26日決定)
  • 事案:株式交換に反対した株主が会社法797条1項に基づき株式買取請求。会社の提示額は1株1518円。株式交換と比較検討されていた他社(オーケー株式会社)からの公開買付けの提案(買付価格1株2250円)等があったことを考慮し、原審は提示額から増額した1株1670円を「公正な価格」とした。
  • 判断:特別の資本関係がない会社間とはいえない場合でも、独立した第三者委員会や専門家の意見を聴くなど意思決定過程の恣意性を排除する措置が講じられ、情報が適切に開示された上で株主総会で適法に承認されるなど、一般に公正と認められる手続により効力が生じたときは、株式交換比率は公正なものとみるのが相当と判示。上場株式では、市場価格が企業の客観的価値を反映していないことをうかがわせる事情がない限り市場株価を基礎資料とすることに合理性があるとした。競合提案や試算が公表されていたこと自体は企業価値の増加をもたらすものではないとして、原審の増額判断を違法とし、原々決定に対する各抗告を棄却した。
  • 実務上のポイント:競合する買収提案があった組織再編の買取価格決定において、競合提案額を理由とする増額を否定した判断として、M&A・株式買取請求実務に影響が大きい。
  • 出典:https://www.courts.go.jp/hanrei/97108/detail2/index.html
    判決文PDF:https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-97108.pdf

3 東京地裁 令和8年9月18日判決(令和6(ワ)70396)著作権侵害等差止請求事件

  • 結果:請求棄却
  • 事案:アニメーション制作会社である原告が、アニメ作品の制作過程で原告従業員が創作したキャラクターの全身イラストにつき、被告(キャラクター商品の製造販売会社)がグッズの製造販売や被告ウェブサイトへの商品画像掲載に際し原告を著作者として表示していないとして、製造譲渡・公衆送信の差止め、廃棄、謝罪広告を求めた。
  • 判断:原告は平成17年3月2日頃に本件イラストの著作権を被告に譲渡したと認定(確認書・譲渡証書の作成、著作権移転登録、長年の使用に対する異議がなかったこと等から推認)。同時期に著作者人格権の不行使合意が成立したと認め、その合意内容は著作権法121条の趣旨を踏まえても公の秩序に反するとまではいえないとした。また、被告サイトの商品画像の横の「Sanrio Original」との表示は、被告のオリジナル商品であることを示すもので著作者名の表示とは認められないとした。
  • 実務上のポイント:ウェブサイト上の商品画像に付された「◯◯ Original」等の表示が著作者名表示に当たらないとされた点、及び著作者人格権不行使合意の有効性を肯定した点で、キャラクタービジネス・EC上の表示実務に参照価値がある。
  • 注記:裁判年月日は本日から18日前で、直近2週間の目安をやや超えるが、新着一覧に掲載され当サイト未報告のため掲載した。詳細ページの判示事項欄は空欄のため、判決文PDFから要約した。
  • 出典:https://www.courts.go.jp/hanrei/97104/detail7/index.html
    判決文PDF:https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-97104.pdf

出典

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。