【判例速報】東京地裁・TikTok投稿動画の削除請求(パブリシティ権・不正競争)ほか計4件(2026年10月1日)

裁判所ウェブサイトの新着裁判例のうち、当サイトの過去の速報で未報告のものは4件です(うちインターネット関連分野に該当するものは1件)。

※裁判所サイトには掲載日(公開日)が表示されないため、裁判年月日ベースで直近の新着分を確認しています。
※各判例の詳細ページでは判示事項・裁判要旨が空欄のため、以下の要約は判決文PDFの記載に基づいています。

1.【インターネット関連】東京地裁・TikTok投稿動画の削除請求(令和8年9月30日)

  • 裁判所:東京地方裁判所 民事第46部
  • 事件番号:令和7(ワ)70635 投稿記事削除請求事件

事案の概要
声優・俳優である原告が、動画投稿サイトTikTokの運営会社(シンガポール法人)に対し、あるアカウントに令和6年7月〜令和7年9月に投稿された動画188件(都市伝説・心霊現象等の雑学ナレーション付き映像)の削除を求めました。根拠は不正競争防止法3条(2条1項1号又は2号)及びパブリシティ権に基づく侵害排除請求です。判決文中には、本件音声について「原告の声を無断で使用してAIに学習させたものではなく、声真似が上手い友人の声をAIに学習させたデータを使用したものである旨が記載されていた」との記載があります。

判断の要旨
請求棄却。投稿者が令和8年5月29日にアカウントを削除し、30日以内に復旧申請をしなかったため、データは同年6月28日の経過をもって被告のサーバから削除されたと認定しました。被告は更に削除義務を負わないとして、不正競争防止法・パブリシティ権の各争点については判断していません。

実務上のポイント
声(AI音声)とパブリシティ権・不正競争防止法という注目の論点は、判断されないまま終わりました。訴訟係属中に投稿者側がアカウントを削除すると削除請求は目的を失うため、損害賠償請求や発信者情報開示請求等を併せて検討する必要があります(この点は本判決の判示ではなく、実務上の留意点です)。

出典:裁判所ウェブサイト 詳細ページ/判決文PDF

2.知財高裁・商標「相続ワンストップ」の記述的表示該当性(令和8年9月16日)

  • 裁判所:知的財産高等裁判所 第2部
  • 事件番号:令和8(行ケ)10020 審決取消請求事件

事案の概要
商標「相続ワンストップ」(第45類・行政書士法1条の2の書類作成)の拒絶査定不服審判で請求不成立とされた出願人が、審決の取消しを求めました。

判断の要旨
請求棄却。本願商標は「様々な相続関連業務を一か所で行うことができる」程度の意味合いで、役務の質を表示記述するものとして一般に認識されるとして、商標法3条1項3号及び4条1項16号該当を肯定しました。

実務上のポイント
士業の業務を「ワンストップ」で表す語は記述的表示とされやすく、事務所名・サービス名の商標出願時の参考になります。

出典:裁判所ウェブサイト 詳細ページ/判決文PDF

3.知財高裁・不使用取消と発注書の交付による「使用」(令和8年9月17日)

  • 裁判所:知的財産高等裁判所 第1部
  • 事件番号:令和8(行ケ)10030 審決取消請求事件

事案の概要
登録商標「REVI」(第3類化粧品等・第5類サプリメント等)について不使用取消審判で登録取消審決がされ、原告がその取消しを求めました。原告は、製造委託先に交付した標章付き発注書も「商品に関する取引書類」に当たり、その交付は「頒布」(商標法2条3項8号)に該当すると主張しました。

判断の要旨
請求棄却。同号の「頒布」は公衆が閲覧可能な状態に置く程度に流通させることを意味するところ、1社のみに対する2回の発注書交付はその実質を有しないとして、商標の使用を否定しました(商標法50条2項)。

実務上のポイント
不使用取消審判への対応では、限られた取引先への発注書等だけでは使用の立証に足りない場合があります。

出典:裁判所ウェブサイト 詳細ページ/判決文PDF

4.知財高裁・GABA茶製造方法特許の非充足(令和8年9月17日)

  • 裁判所:知的財産高等裁判所 第1部(原審:東京地裁 令和5(ワ)70445)
  • 事件番号:令和8(ネ)10040 特許権に基づく差止等請求控訴事件

事案の概要
「γ-アミノ酪酸含量の高い茶の製造方法」の特許権者が、茶の製造業者に差止等を求めた事件の控訴審です。

判断の要旨
控訴棄却。構成要件B「嫌気処理した後、好気処理する操作を交互に繰り返す」は操作の複数回の繰返しを要し、「好気処理」は静置時間10分〜3時間の処理を意味すると解釈しました。被告方法は開封後5分以内に次工程へ移行するため、構成要件を充足しないとしました。

実務上のポイント
方法発明における工程の時間・回数のクレーム解釈が非充足の決め手となった例です。

出典:裁判所ウェブサイト 詳細ページ/判決文PDF

出典

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。