【判例速報】最高裁・公募型企画競争と入札妨害罪/大津地裁・メタノール中毒傷害で無罪ほか計3件(2026年9月29日)

裁判所ウェブサイトの新着裁判例のうち、当サイトの過去の速報で未報告のものは3件です(インターネット関連分野に直接該当するものは0件)。

【注記】裁判所ウェブサイトには掲載日(公開日)が表示されないため、「昨日から本日に公開された分」を厳密に特定することはできません。そのため、裁判年月日ベースで直近の新着一覧(下級裁判所(速報)・新着統合・知的財産裁判例集の3本)を確認し、既報分との重複を除いて掲載しています。
なお、奈良地裁判決(令和8年8月19日)は裁判年月日が2週間より前ですが、新着一覧に新たに掲載されたため収録しました。

1 最高裁・公募型企画競争は刑法96条の6第1項「入札で契約を締結するためのもの」に当たる

  • 最高裁判所第二小法廷/令和8年9月28日判決/令和7年(あ)第262号 公契約関係競売入札妨害被告事件(原審:札幌高等裁判所 令和7年1月28日 令和6年(う)第93号)
  • 事案の概要:被告人2名(会社の支店長・開発統括本部長)が、医療センター事務部長と共謀し、敷地内保険調剤薬局整備運営事業の企画競争で自社を最優秀提案者とするため、提出期限後に他社の提案額を教示され、支払額を増額した企画提案書を再提出したとして起訴された事案。原判決は、企画競争は優先交渉権者の決定にとどまり「入札で契約を締結するためのもの」に当たらないとして無罪としていた。
  • 判断の要旨:原判決破棄。「法令又は内規に基づく方法によって契約の相手方を選定することが権限ある機関により適法に決定された場合において、当該方法が競争入札の実質を有するときは」同項の「入札で契約を締結するためのもの」に当たると判示し、国家公務員共済組合連合会の内規に基づく公募型企画競争がこれに該当するとした。被告人甲は控訴棄却(第1審有罪判決を維持)、被告人乙は札幌高裁へ差戻し。裁判官全員一致。
  • 実務上のポイント:形式上「入札」でない企画競争・プロポーザル方式であっても、内規に基づき適法に決定され競争入札の実質を有すれば入札妨害罪の対象となります。公的機関との取引やコンプライアンス助言の場面で留意を要します。インターネット関連業務への直接の影響はありません。
  • 判示事項は裁判例詳細ページの記載、判示の文言は判決文PDFにより確認しました(原典確認済み)。詳細ページの「裁判要旨」「参照法条」欄は空欄です。
  • 出典:裁判例詳細/判決文PDF

2 大津地裁・夫にメタノールを摂取させたとする傷害事件で無罪

  • 大津地方裁判所刑事部/令和8年9月3日判決/令和6年(わ)第429号 傷害被告事件
  • 事案の概要:被告人が令和5年9月21日頃から23日頃までの間、滋賀県内の自宅で、夫に飲料に混ぜるなどの方法でメタノールを経口摂取させ、回復の見込みのない視力障害の傷害を負わせたとして起訴された事案(求刑懲役9年)。
  • 判断の要旨:無罪。夫がメタノール中毒を発症したことは確実であるものの、被告人の犯人性を直接認定できる証拠は存在せず、夫が自殺目的でメタノールを摂取した具体的な可能性が残るため、被告人が犯人であることが常識的に考えて間違いないとまではいえないとしました。
  • 実務上のポイント:直接証拠を欠く情況証拠型の事件で、自己摂取という代替仮説の具体的可能性を理由に犯人性を否定した事例です。インターネット関連業務への直接の影響はありません。
  • 裁判例詳細ページの「結果」「判示事項の要旨」「裁判要旨」「参照法条」欄はいずれも空欄であり、本要旨は判決文PDFの記載に基づきます(原典確認済み)。
  • 出典:裁判例詳細/判決文PDF

3 奈良地裁・内縁の妻との心中目的の嘱託殺人(拘禁刑3年・執行猶予5年)

  • 奈良地方裁判所刑事部/令和8年8月19日判決/令和8年(わ)第226号 嘱託殺人被告事件
  • 事案の概要:被告人が、税務調査の危機を告げた際に内縁の妻から一緒に死ぬことを希望され、自身の経済状態に限界等を感じていた中でこれに応じることを決意し、包丁で妻の左手首内側を切り、左橈骨動脈切断による出血性ショックで死亡させた事案。
  • 判断の要旨:拘禁刑3年・執行猶予5年。鋭利な包丁で手首を切った犯行態様は危険であり、経済的問題の解消策を十分に検討せずに実行した点を非難しつつ、被害者の嘱託を受けて心中を図ったこと、反省の態度、前科がないことを考慮しました。
  • 実務上のポイント:経済的困窮を背景とする心中型嘱託殺人の量刑事例です。インターネット関連業務への直接の影響はありません。
  • 裁判例詳細ページの「結果」「判示事項の要旨」「裁判要旨」「参照法条」欄はいずれも空欄であり、本要旨は判決文PDFの記載に基づきます(原典確認済み)。
  • 出典:裁判例詳細/判決文PDF

出典

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。