結婚式場などのキャンセル料は、規約どおり払うしかないか|解約料が無効になる部分と、サイン前に確かめる点を弁護士が解説します
Q 結婚式場の見学に行き、担当の方から申込みを勧められて、申込書にサインする直前です。裏面の規約を読むと、解約料の表があり、「実際に使用される日から1年以上前の場合 契約金額の80%」と書かれています。式はまだ1年以上先です。この申込書にサインしてしまうと、もし後で解約することになった場合、書かれたとおりの金額を払うしかないのでしょうか。
A 消費者と事業者との契約では、解約料の定めのうち、その事業者に生ずべき「平均的な損害」の額を超える部分は、規約に書かれていても無効です。ただし、無効になるのは超える部分だけであり、超えていることは、基本的には無効を主張する消費者の側が主張し立証しなければならないと解されています。
解約料のうち「平均的な損害」を超える部分は無効です
消費者契約法9条1項1号は、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項について、これらを合算した額が、同種の消費者契約の解除に伴いその事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分を無効とすると定めています。
ここでいう「消費者契約」は、消費者と事業者との間で締結される契約です(同法2条3項)。「消費者」は個人をいいますが、事業として又は事業のために契約の当事者となる場合は除かれます(同条1項)。
なお、民法420条1項は、当事者が債務の不履行について損害賠償の額を予定することができると定め、同条3項は、違約金を賠償額の予定と推定しています。消費者庁の逐条解説は、消費者契約法9条1項1号について、民法420条の適用の如何にかかわらず、平均的な損害の額を超える額の支払を消費者に請求することができないとするものだと説明しています。
逐条解説は、損害賠償の予定と併せて違約金を定めた場合には消費者に過大な義務が課されるおそれがあるため、両者を合算した額で判断するのだと説明しています。例として、損害賠償の予定が3万円、違約金が2万円、平均的な損害の額が4万円の場合、それぞれは4万円を下回っていても、合算した5万円は平均的な損害の額を超えることになると述べています。
「平均的な損害」は、解約の時期などの区分ごとに判断されます
同号は、平均的な損害を「当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ」て判断すると定めています。消費者庁の逐条解説は、平均的な損害の額を、同じ事業者が結ぶ多数の同種の契約について類型的に考えた場合の平均値であり、業界の水準を指すものではないと説明しています。
逐条解説は、結婚式場等の契約について、次の二つの例を示しています。
- 実際に使用される日から1年以上前の解約で、契約金額の80%を解約料とする定め → 通常は平均的な損害の額を超えると考えられる
- 実際に使用される日の前日の解約で、契約金額の80%を解約料とする定め → 通常は平均的な損害の額を超えるとはいえない
前者について逐条解説は、1年前の解約で生ずべき平均的な損害の額が仮に契約金額の5%だとすると、80%との定めのうち75%の部分が無効となり、事業者は5%分しか請求できないと説明しています。同じ80%という数字でも、解約の時期によって結論が変わるということです。
超えていることは、基本的に消費者の側が示さなければなりません
最高裁判所第二小法廷平成18年11月27日判決(平成17年(受)第1158号・第1159号、民集60巻9号3437頁)は、大学の入学を辞退した学生が納付済みの授業料等の返還を求めた事件で、平均的な損害及びこれを超える部分については、事実上の推定が働く余地があるとしても、基本的には特約の無効を主張する側が主張立証責任を負うと判断しました。消費者庁の逐条解説は、この判決を消費者契約法9条1項1号に関連する最高裁判決として紹介しています(判決当時の条文は同法9条1号)。
一方で逐条解説は、平均的な損害の額はその事業者に固有の事情であり、立証に必要な資料は主として事業者が持っているため、消費者による立証が困難な場合もあると述べています。
事業者には、算定の根拠の概要を説明する努力義務があります
消費者契約法9条2項は、事業者が、解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項に基づいて支払を請求する場合に、消費者から説明を求められたときは、算定の根拠の概要を説明するよう努めなければならないと定めています。
逐条解説は、説明は概要で足り、費用などの具体的な数字までは必要ないとしています。結婚式場の例としては、挙式の1か月前には会場の装飾品の仕入れや司会者等の手配を通常は完了させており、挙式が中止になってもその費用が発生するため、人件費等を含めてキャンセル料を設定している、という趣旨の回答を挙げています。ただし、この規定は努力義務であり、違反を理由に意思表示の取消しや損害賠償といった効果が直ちに生ずるものではないとも説明しています。
よくあるご質問
すでに解約料を支払ってしまいました。もう争えませんか。
上の最高裁判決は、すでに納付された授業料等の返還を、不当利得として求めた事件です。同判決は、大学の在学契約について、入学年度が始まる4月1日の前日である3月31日までに解除の意思表示がされた場合には、原則として大学に生ずべき平均的な損害は存しないものとして、授業料等を返還しない旨の特約はすべて無効となると判断しています。支払った後であっても、この規定による判断の対象となった例です。
自分の店の仕入れのために結んだ契約でも、この規定は使えますか。
消費者契約法2条1項は、事業として又は事業のために契約の当事者となる個人を「消費者」から除いています。そのような契約は同法の「消費者契約」に当たらず、同法9条1項1号は適用されません。
支払が遅れたときの遅延損害金も、規約で高く定められています。
消費者契約法9条1項2号は、支払期日までに支払わない場合の損害賠償の予定や違約金について、支払期日の翌日から支払をする日までの日数に応じ、未払額に年14.6パーセントの割合を乗じて計算した額を超える部分を無効としています。
要点の整理
- 消費者契約の解除に伴う損害賠償の予定や違約金は、合算した額が、その事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分が無効となる(消費者契約法9条1項1号)。
- 平均的な損害は、条項で設定された解除の事由・時期等の区分に応じて判断され、同じ割合でも解約の時期によって結論が変わる(同号)。
- 平均的な損害を超えていることは、基本的には無効を主張する側が主張立証責任を負う(最高裁判所第二小法廷平成18年11月27日判決)。
- 事業者は、解約料を請求する際に消費者から求められれば、算定の根拠の概要を説明するよう努めなければならない(同法9条2項)。
- 事業として又は事業のために契約の当事者となる個人は「消費者」に当たらず、この規定は適用されない(同法2条1項・3項)。
※本記事の条文は、2026年9月16日時点のものです。
解約料の規約がある申込書にサインしようとしている方へ
解約料の表は、サインする時点では先の話に見えますが、実際に解約するときにはその表の割合を前提に請求を受け、しかも平均的な損害を超えていることを示す負担は、基本的に消費者の側にかかります。
サインする前に、解約の時期ごとの割合や区分の書き方を確かめたい方は、契約書・和解書・示談書のサイン前レビューをご利用ください。すでに解約料を請求されている方は、ご相談のご予約からお申し込みください。費用の定めは弁護士費用に掲載しています。
※本記事は一般的な法律解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。具体的な事案は弁護士にご相談ください。
解約料の表を読んで、手が止まった方へ
使用日の1年以上前の解約でも、前日の解約と同じ割合が書かれている。解約の時期による区分がない。損害賠償の予定と違約金が別々に定められている。どれか一つでも引っかかる点があれば、サインする前にご相談ください。申込書にサインする前であれば、規約の中身を確かめてから、申し込むかどうかを決めることができます。
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