【判例速報】大阪地裁・意匠の先使用権/知財高裁・商標「ゴミサー」の権利濫用ほか計5件(2026年9月16日)
裁判所ウェブサイトの新着裁判例のうち、当サイトの過去の速報で未報告のものは5件です(インターネット関連分野に直接該当するものは0件。ただし1件は特許(ネットワークシステム)に関する契約紛争、2件は意匠・商標の権利行使に関する判断であり、知財・IT実務に参照価値があります)。
【注記】裁判所ウェブサイトには掲載日(公開日)が表示されないため、「昨日から本日に公開された分」を厳密に特定することはできません。そのため、裁判年月日ベースで直近の新着一覧(下級裁判所(速報)・新着統合・知的財産裁判例集の3本)を確認し、既報分との重複を除いて掲載しています。
裁判年月日が7月のものも、裁判所ウェブサイトに新たに掲載されたと認められ、かつ未報告のものは対象に含めています。
1 大阪地裁・意匠の先使用権(意匠法29条)は「類似する意匠」にも及ぶ
- 大阪地方裁判所/令和8年9月10日/令和7年(ワ)第1068号等(意匠権侵害差止等請求事件(本訴)、差止等請求権不存在確認請求事件(反訴))/権利種別:意匠権
- 事案:ドイツ法人である意匠権者(原告)が、鋼材販売会社および土木工事業者(被告ら)に対し、シートパイル用連結具(鋼矢板連結用継手)が本件意匠に類似するとして差止め等を求めた事案。被告側は先使用権、日本国内先存在の抗弁、新規性欠如等を主張し、反訴を提起した。
- 判断の要旨:本訴請求をいずれも棄却。被告土木工事業者は平成29年に本件意匠を知らずに被告意匠を創作し、同年12月から被告製品を輸入・納入して、優先日(平成30年11月6日)までに事業の準備をしていたと認定。意匠法29条の「実施又は準備をしている意匠」には類似する意匠も含まれるとし、被告製品2・3も被告製品1と重要部分を共通にする類似意匠であるとして、先使用に基づく通常実施権の成立を認めた。販売会社もその実施権の行使の範囲内とされた。反訴は、損害賠償請求権・差止請求権の不存在確認部分を却下し、不当利得返還請求権に関する部分を認容。
- 実務上のポイント:意匠法29条の先使用権の客観的範囲について、登録意匠に類似する意匠にも及ぶことを正面から認めた判断。製造・輸入の開始時期と優先日の前後関係、製品仕様の同一性についての立証設計に直結する。
- 出典:裁判例詳細/判決文PDF
2 知財高裁・代理店が無断出願した商標権の行使は権利濫用(「ゴミサー」)
- 知的財産高等裁判所第4部/令和8年9月9日/令和8年(ネ)第10017号(商標権侵害行為差止請求控訴事件)/控訴棄却。原審:東京地方裁判所 令和5年(ワ)第70505号/権利種別:商標権
- 事案:商標権者(控訴人・株式会社エイ・アイ・シー)が、業務用生ごみ処理機の開発元(被控訴人・エスキー工機株式会社)に対し、「ゴミサー」の標章の使用差止めと約4億1742万円の損害賠償を求めた事案。控訴人は長年、被控訴人商品の販売代理店として当該標章を使用してきた。
- 判断の要旨:控訴棄却。①被控訴人が独自に開発した商品の名称として「ゴミサー」を先に使用していたこと、②控訴人が旧商標権の消滅後に被控訴人に無断で本件出願をして商標登録を取得したこと、③こうした経過に照らせば控訴人は被控訴人による「ゴミサー」の使用を尊重すべき関係にあることを指摘し、被控訴人は当該使用を控訴人に妨げられない正当な利益を有するとして、控訴人の権利行使を権利の濫用と判断した。
- 実務上のポイント:代理店・OEM先による冒認的な商標出願への対抗として、権利濫用の抗弁が認められた事例。ネット上の商品名表示やECモールでの出品に対する差止請求への防御でも、同様の構成が想定される。
- 出典:裁判例詳細/判決文PDF
3 知財高裁・契約当事者の確定と法人格否認の法理(ネットワークシステム特許関連の業務委託紛争)
- 知的財産高等裁判所第4部/令和8年9月9日/令和8年(ネ)第10032号(損害賠償請求控訴事件)/控訴棄却。原審:大阪地方裁判所 令和7年(ワ)第7863号/権利種別:特許権(発明の名称:ネットワークシステム、情報処理方法およびサーバ ほか)
- 事案:控訴人(株式会社toyou)が、被控訴人2社およびその取締役3名に対し、債務不履行に基づく損害賠償2249万6000円等、不法行為に基づく同額および慰謝料100万円、取締役に対する任務懈怠責任を求めた事案。原審は業務委託料300万円の支払のみを認容した。
- 判断の要旨:控訴棄却。契約当事者は契約書上の一方の法人のみであり、控訴人ともう一方の法人との間の合意によるものとは認められないと判断。契約書において当該法人のみが契約当事者とされたことを合理的に説明できないとして、法人格否認の法理の適用も否定した。特許権の価値が毀損されたとの主張も、具体的な根拠が不明であるとして排斥した。業務委託料300万円および令和6年11月26日から年3%の遅延損害金の支払請求のみが維持された。
- 実務上のポイント:グループ会社間で契約主体が入り組む開発・業務委託案件において、契約書の当事者欄の記載が決定的に働くことを確認した事例。IT・システム開発契約のレビュー実務に参照価値がある。
- 出典:裁判例詳細/判決文PDF
4 青森地裁八戸支部・大型貨物車のタイヤ脱落による過失運転致死傷
- 青森地方裁判所八戸支部/令和8年7月28日/令和8年(わ)第32号(過失運転致死傷)
- 事案:被告人が令和5年12月1日、高速道路を大型貨物自動車で時速約80キロで走行中、タイヤの空転警告灯が点灯するなど走行が不安定となる兆候があったにもかかわらず具体的な措置を執らずに走行を継続し、タイヤを脱落させて、路肩で交通標識の撤去作業に従事していた作業員(32歳)に衝突させて死亡させ、別の作業員に外傷性頚部症候群等の傷害を負わせた事案。
- 判断の要旨:禁錮1年6月、裁判確定から4年間執行猶予。脱輪の兆候を認識しながら漫然と運転を継続した過失は相応に大きく、若年の被害者の生命が失われた結果は重大であるとする一方、異常の発生から事故までが短時間であり、結果回避が可能な時点までにタイヤ脱輪の可能性が相当高いと予見できたとまでは言い切れない点、反省、前科前歴がないこと、被害弁償の見込み等を考慮した。
- 実務上のポイント:車両の異常表示の看過型の過失運転致死傷における予見可能性の評価と量刑の実例。運送事業者の使用者責任・安全配慮義務の検討にも参照できる。
- 出典:裁判例詳細/判決文PDF
5 福島地裁いわき支部・補助金返還等請求事件(未精査)
- 福島地方裁判所いわき支部/令和8年7月6日/令和8年(ワ)第8号(補助金返還等請求事件)
- 状況(未精査):裁判所ウェブサイトの裁判例詳細ページは、結果・判示事項の要旨・参照法条のいずれも空欄である。また、公開されている判決文PDFは機械可読なテキストを含まないため、本稿作成時点では事案の概要および判断の要旨を確定できなかった。推測による補充は行わない。
- 出典:裁判例詳細/判決文PDF
出典
- 裁判所ウェブサイト 下級裁判所(速報)新着一覧
- 裁判所ウェブサイト 新着統合一覧
- 裁判所ウェブサイト 知的財産裁判例集 新着一覧
- 大阪地裁令和8年9月10日:裁判例詳細/PDF
- 知財高裁令和8年9月9日(商標):裁判例詳細/PDF
- 知財高裁令和8年9月9日(損害賠償):裁判例詳細/PDF
- 青森地裁八戸支部令和8年7月28日:裁判例詳細/PDF
- 福島地裁いわき支部令和8年7月6日:裁判例詳細/PDF

