医療保護入院と退院請求|入院期間・精神医療審査会の審査を条文で確認します

Q 家族が精神科病院に「医療保護入院」となりました。本人は退院したいと言っています。退院を求めることはできるのでしょうか。

A 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」といいます)に、退院等の請求の手続が定められています。請求は、入院中のご本人からも、ご家族からも行うことができます。以下、条文に沿って流れを確認いたします。

1 医療保護入院とはどのような入院か

精神保健福祉法33条1項は、精神科病院の管理者は、指定医による診察の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者であって、当該精神障害のために同法20条の規定による入院(任意入院)が行われる状態にないと判定されたものについて、その家族等のうちいずれかの者の同意があるときは、本人の同意がなくても、六月以内で厚生労働省令で定める期間の範囲内の期間を定め、入院させることができる、と定めています。

条文が「期間を定め」と書いていることが重要です。医療保護入院は、期限のない入院ではなく、あらかじめ期間を定めて行われるものとされています。

また、同条2項は、家族等がない場合、家族等の全員がその意思を表示することができない場合、又は家族等の全員が同意若しくは不同意の意思表示を行わない場合について、居住地を管轄する市町村長の同意によることができると定めています。

2 退院等の請求(38条の4)

精神保健福祉法38条の4は、精神科病院に入院中の者又はその家族等は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事に対し、次のことを求めることができると定めています。

  • その者を退院させること
  • 精神科病院の管理者に対し、その者を退院させることを命じること
  • 精神科病院の管理者に対し、その者の処遇の改善のために必要な措置を採ることを命じること

退院そのものだけでなく、処遇の改善を求めることもできる点が、条文上明記されています。

3 精神医療審査会による審査(38条の5)

請求を受けた都道府県知事は、その内容を精神医療審査会に通知し、入院の必要があるかどうか、又はその処遇が適当であるかどうかに関し、審査を求めなければなりません(同法38条の5第1項)。審査会は、審査を行い、その結果を知事に通知します(同条2項)。

審査に当たっては、審査会は、請求をした者と、入院先の精神科病院の管理者の意見を聴かなければなりません。ただし、審査会がこれらの者の意見を聴く必要がないと特に認めたときは、この限りでないとされています(同条3項)。

さらに審査会は、必要があると認めるときは、入院中の者の同意を得て委員に診察させ、又は病院の管理者その他関係者に対して報告を求め、診療録その他の帳簿書類の提出を命じ、若しくは出頭を命じて審問することができます(同条4項)。

知事は、審査の結果に基づき、その入院が必要でないと認められた者を退院させ、又は病院の管理者に対し退院させることを命じ、若しくは処遇の改善のために必要な措置を採ることを命じなければなりません(同条5項)。そして、請求をした者に対し、審査の結果とこれに基づき採った措置を通知します(同条6項)。

4 手続にかかる期間

私の経験上、退院請求の申し立てから、結論が出るまで、数カ月かかることが多いように感じます(1年はかからないでしょう。)。

5 弁護士に依頼した場合にできること

・まず、実際に入院されている方にお会いします。


・そして、入院されている方の御希望を伺います。もし、早急な申立を希望されれば、早急に申立をいたします。しかし、もし、より退院請求の確率が高まるような方策の検討を希望される場合には、じっくり検討したうえで申立いたします。

・入院されている方のご家族とお話ができる場合には、ご家族とお話することもあります。

退院請求・処遇改善請求の概要と流れについては、退院請求・処遇改善請求とは退院請求・処遇改善請求の流れと弁護士費用でも取り上げております。ご相談のお申し込みは、退院請求(精神科病院からの退院)をお考えのご本人・ご家族へのページをご覧ください。

※本記事は、2026年9月9日時点の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(2026年6月24日施行の内容)を確認して作成しています。個別の事案の見通しは、事情によって異なります。

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。