【判例速報】奈良地裁・小学校のいじめと学校の国家賠償責任(2026年9月7日)

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1.奈良地方裁判所 令和8年7月16日判決(令和6(ワ)91・国家賠償請求事件)

奈良地方裁判所 民事部 令和8年7月16日判決
事件番号:令和6(ワ)91
事件名:国家賠償請求事件
裁判種別:下級裁判所(速報)
結果:請求棄却

事案の概要

小学校に在籍していた児童(原告A)とその保護者(原告B・C)が、原告Aが同級生からいじめを受けたことについて、学校の教諭らにいじめの報告・情報共有義務違反、いじめ調査義務違反・いじめ防止義務違反があり、校長・教頭にいじめ対策組織の構築義務違反等があったとして、奈良市に対し国家賠償を求めた事案です。請求額は、原告A123万2771円、原告B71万4472円、原告C56万1957円及び遅延損害金です。

判断の要旨

請求をいずれも棄却(訴訟費用は原告らの負担)。裁判所は、国家賠償法1条1項の「違法」とは公務員が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違反することをいうとしたうえで、予見可能性と具体的な結果回避義務の観点から各争点を判断しました。

  • 令和3年度2学期の暴力行為については、当時は単発的な行為である可能性があり、その後のいじめ発生についての予見可能性がなかったとして、義務違反を否定。
  • 令和4年2月16日の暴行については、上記事象によりその後のいじめ発生の予見可能性は認められるとしつつ、学校が児童らへの相応の聞き取り調査、保護者間の話し合い、児童同士が仲直りをする機会の設定、支援員の配置、翌年度のクラス分離といった個別具体的な配慮を行っており、結果回避のための措置を尽くしていたとして、義務違反を否定。
  • 児童が自学ノートに記載した希死念慮をうかがわせる記載への対応については、担当教諭が記載を確認した後に児童本人と対話して深刻な希死念慮がないことを確認し、不満の解消に向けた具体的な対応をとっていたことから、直ちに管理職や保護者と情報共有をしなかったことをもって義務違反とはいえないと判断。
  • 校長・教頭は、個別の児童に対するいじめ防止義務ではなく、学校全体のいじめ対応体制を整備する義務を負うにとどまるとし、校内委員会を実施して情報共有をしていた本件では義務違反はないとしました。

判決文中で言及された主な法令は、いじめ防止対策推進法2条1項・4条1項・22条・23条・28条1項、国家賠償法1条1項、学校教育法37条4項・7項、奈良市いじめ防止基本方針、文部科学省の基本的な方針です。

裁判体は、裁判長裁判官 和田健、裁判官 林香穂です(石間大輔裁判官は転補のため署名押印できない旨が付記されています)。

実務上のポイント

  • 学校のいじめ対応をめぐる国家賠償請求において、義務違反の判断が「予見可能性」と「具体的結果回避義務の履行」の二段階で行われることを明示した事例です。
  • 第2の事象について予見可能性を肯定しながら、学校が現に講じた個別的措置(聞き取り、保護者間の話し合い、支援員配置、クラス分離等)を総合評価して結果回避義務の履行を認めた点は、主張立証の設計上参考になります。
  • 管理職の義務を学校全体の「体制整備義務」に限定した点は、原告側・被告側いずれの主張構成にも影響します。
  • 本件には、発信者情報開示、情報流通プラットフォーム対処法、ネット上の名誉毀損・プライバシー侵害といったインターネット関連分野の論点は含まれていません。

出典:裁判例詳細(奈良地裁 令和6(ワ)91)判決文PDF

精査状況について

  • 上記1件は、裁判例詳細ページの「判示事項の要旨」「裁判要旨」「参照法条」欄がいずれも空欄であり、本記事の要旨は判決文PDFの記載に拠っています。原典(courts.go.jp掲載のPDF)は確認済みです。
  • 新着一覧は各リストとも先頭30件のみが静的に取得可能であり、31件目以降は本日の確認範囲に含まれていません。

出典

本記事は、裁判所ウェブサイト(courts.go.jp)掲載の以下の公式ページに基づいています。

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。