【判例速報】発信者情報開示(BitTorrent)・宗教法人解散命令ほか計4件(2026年7月27日)

裁判所ウェブサイト掲載の新着判例のうち、実務上重要な4件をお届けします。うち1件はインターネット関連(発信者情報開示)です。

【注記】裁判所サイトには掲載日(公開日)が表示されないため、「新着公開分」の厳密な特定はできません。裁判年月日ベースで直近の新着分を確認しています。以下はいずれも裁判所ウェブサイト(courts.go.jp)掲載の原典を確認済みです。

1.【インターネット関連】BitTorrentでの著作物「ピース」送信と発信者情報開示

大阪地方裁判所第26民事部/令和8年6月4日判決/令和7年(ワ)第11139号(発信者情報開示命令の申立てについての決定に対する異議の訴え事件)

  • 事案:プロバイダ(原告)が、著作権者(被告)の発信者情報開示命令申立てを認容した大阪地裁決定に対し、情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)14条1項に基づく異議の訴えを提起。争点は、BitTorrent上で契約者が著作物(動画)を送信していたか等。
  • 判断:BitTorrentのネットワーク上で著作物ファイルの「ピース(断片)」を送信していた契約者につき、完全な動画ファイルを保有せず断片の送信にとどまっても自動公衆送信権侵害が成立すると判断。権利侵害が明らかで開示を受ける正当な理由もあるとして、開示命令決定を認可(原告の請求を棄却)。
  • 実務上のポイント:ピース単位のアップロードでも自動公衆送信権侵害を肯定した点が実務上重要。調査会社と申立代理人の関係性や、当初圧縮動画を提出し裁判所の求めに応じて非圧縮動画を再提出した経緯についても手続上の信義則違反を否定。ただし同様の手続追行を繰り返した場合は別結論の可能性を付言。発信者情報開示・著作権侵害対応の実務に直結する事例。
  • 出典:裁判例詳細全文PDF

2.【最高裁】宗教法人の解散命令と信教の自由

最高裁判所第三小法廷/令和8年6月22日決定/令和8年(ク)第407号(宗教法人解散命令申立事件)/結果:棄却(原審・東京高裁 令和8年3月4日)

  • 判示事項:宗教法人法81条1項1号に規定する事由があるとしてされた宗教法人の解散命令が、憲法20条1項、21条1項に違反しないとされた事例。
  • 判断:抗告を棄却し、解散命令を是認。
  • 出典:裁判例詳細

3.【最高裁】性的姿態等撮影未遂に係る略式命令と非常上告

最高裁判所第二小法廷/令和8年7月10日判決/令和7年(さ)第1号(性的姿態等撮影未遂被告事件に係る略式命令に対する非常上告事件)/原審:所沢簡易裁判所 令和7年8月22日

  • 判示事項:刑訴法458条1号ただし書を適用すべきではないとされた事例。
  • 実務上のポイント:性的姿態等撮影処罰法違反(未遂)に係る略式命令についての非常上告。撮影行為はネット上の私事性的画像の拡散の入口ともなり得る分野であり、刑事手続上の論点として留意。なお、裁判要旨は未掲載のため、詳細は全文PDFを要確認。
  • 出典:裁判例詳細

4.【札幌高裁】アイヌのサケ捕獲権(先住権)確認請求

札幌高等裁判所第3民事部/令和8年7月2日判決/令和6年(行コ)第9号(サケ捕獲権確認請求控訴事件)/結果:棄却(原審・札幌地裁 令和2年(行ウ)第22号)

  • 事案:浦幌町内のアイヌにより構成される団体が、刺し網漁によりサケを捕獲する権利(漁業権)の確認等を求めた事案。
  • 判断:先住民族であるアイヌに対し憲法13条による文化享有権を認めたが、本件漁業権は財産権としての側面が強く立法府による制約を受け、憲法13条等により保障されないとして棄却。無効確認・違法確認の訴えは確認の利益を欠き、又は一般的・抽象的な違憲違法確認を求めるもので法律上の争訟に該当しないとして却下。
  • 出典:裁判例詳細

出典

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。