【法改正速報】暗号資産規制を金商法へ移管・刑訴法改正(再審証拠開示)・国旗損壊罪など10法公布|2026年7月24日

対象期間:令和8年7月23日〜7月24日

昨日・本日の官報(7月23日号外第163号、7月24日号外第164号)で、第221回国会(特別会、会期末7月17日)で成立した法律のうち法律第63号〜第72号(計10件)が公布されました。うち弁護士業務上重要と判断した3件を詳細に、残る7件を参考として掲載します。いずれも区分は「公布」です。

報告件数:3件(公布3件)/参考:同期間公布のその他7件


1. 金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律(令和8年法律第64号)― インターネット関連・暗号資産

区分・年月日:公布(令和8年7月23日・官報号外第163号)/成立:令和8年7月15日

概要:暗号資産に係る規制を資金決済法から金融商品取引法へ移管し、有価証券とは別個の金融商品と位置付け。暗号資産の売買・引受け等を金融商品取引業に取り込み、業務管理体制整備義務・責任準備金・自己資本規制比率等を課す。暗号資産の不公正取引(インサイダー・相場操縦・風説の流布)に課徴金・罰則を新設し、無登録業者による一定の売付け等を原則無効化。サステナビリティ(特定非財務情報)開示・監査証明制度を導入。有価証券届出書の提出免除基準を1億円→5億円に引上げ。

施行日:原則、公布の日(7月23日)から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日(具体的期日は政令未制定のため未定)。ただし、無登録業者に対する罰則引上げ等は公布から20日を経過した日=令和8年8月12日、特定非財務情報開示・成長資金供給関係は令和9年4月1日、証券取引等監視委員会の犯則調査手続のデジタル化は令和9年10月1日(施行日は金融庁「法律案要綱」附則による)。

実務上のポイント:暗号資産交換業者・Web3事業者の顧問業務に直結。規制根拠法の金商法移管に伴う登録移行・体制整備の助言需要が生じる。インフルエンサー等が対価を受けて暗号資産の取引判断に関する意見を表示する場合の表示義務に注意。

出典:
・インターネット版官報 令和8年7月23日 号外第163号 https://www.kanpo.go.jp/20260723/20260723.fullcontents.html
・参議院 議案審議情報(第221回国会・閣法第57号) https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/221/meisai/m221080221057.htm


2. 刑事訴訟法の一部を改正する法律(令和8年法律第67号)― 基本法・刑事弁護(再審法改正)

区分・年月日:公布(令和8年7月24日・官報号外第164号)/成立:令和8年7月17日(参議院本会議可決)

概要(参議院議案要旨):再審手続を非常救済手続としてより適切に機能させるための改正。①審判開始の決定をした裁判所は、一定の要件の下、検察官に対し再審請求の理由に関連すると認められる証拠の提出を命じなければならない(証拠開示)とともに、謄写された証拠の適正管理・目的外使用禁止を整備。②再審開始の決定等に対する検察官の即時抗告等を「取り消されるべき十分な根拠がある場合」に限定し、政府は決定・抗告の有無・理由を公表。③通常審に関与した裁判官の除斥。④裁判所の遅滞なき調査義務・事実取調べ請求。⑤再審無罪確定時の費用補償。衆議院で附則の検討対象・運用措置につき修正。

施行日:一部の規定を除き、公布の日(7月24日)から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日(具体的期日は政令未制定のため未定)。

実務上のポイント:再審請求手続における検察官手持ち証拠の開示ルールが法定化される点が最重要で、刑事弁護(特に再審事件)の実務に極めて大きい影響。会期末(7/17)に成立した重要な基本法改正であり、施行に向けた実務運用(証拠一覧表・目的外使用禁止)の動向を注視。

出典:
・参議院 議案審議情報(第221回国会・閣法第61号/議案要旨) https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/221/meisai/m221080221061.htm
・インターネット版官報 令和8年7月24日 号外第164号 https://www.kanpo.go.jp/20260724/20260724.fullcontents.html


3. 国旗の損壊等の処罰に関する法律(令和8年法律第69号)― 刑事・表現の自由(新規制定・議員立法)

区分・年月日:公布(令和8年7月24日・官報号外第164号)/成立:令和8年7月17日(参議院本会議可決)/衆第18号

概要(参議院議案要旨):人に著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法により、公然と国旗を損壊し、除去し、又は汚損した者を、2年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金に処する新設の刑罰法規。該当性は行為の外形・周囲の状況その他客観的事情を総合勘案。表現の自由その他日本国憲法の保障する自由と権利を不当に侵害しないよう留意する適用上の注意規定を置く。施行後3年を目途に、国旗損壊映像に関するインターネット等の利用状況等を勘案した検討条項を設ける。

施行日:公布の日(7月24日)から起算して20日を経過した日=令和8年8月13日(施行間近)。

実務上のポイント:新たな表現規制型の刑罰法規であり、表現の自由との緊張関係が論点。SNS上の国旗損壊映像の投稿・拡散に関する相談との接点があり得る。構成要件(「著しく不快又は嫌悪の情を催させる方法」「公然」)の解釈が刑事弁護上の争点となる。

出典:
・参議院 議案審議情報(第221回国会・衆第18号/議案要旨) https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/221/meisai/m221090221018.htm
・インターネット版官報 令和8年7月24日 号外第164号 https://www.kanpo.go.jp/20260724/20260724.fullcontents.html


【参考】同期間(7/23〜7/24)公布のその他の法律(詳細略)

  • 法律第63号 高等学校の定時制教育及び通信教育振興法の一部を改正する法律(7/23公布)
  • 法律第65号 下水道法等の一部を改正する法律(7/23公布)
  • 法律第66号 皇室典範等の一部を改正する法律(7/24公布)
  • 法律第68号 電気事業法の一部を改正する法律(7/24公布)
  • 法律第70号 ヒトゲノム編集胚等の取扱いの規制に関する法律〔新規制定〕(7/24公布)
  • 法律第71号 重要品種の育成及びその種苗の生産の振興に関する法律〔新規制定〕(7/24公布)
  • 法律第72号 種苗法の一部を改正する法律(7/24公布)

いずれもインターネット関連業務・士業一般実務への直接の影響は相対的に限定的と判断し、詳細は割愛しました。
出典:インターネット版官報 令和8年7月23日号外第163号/令和8年7月24日号外第164号(上記URL)


【調査範囲・留意事項】

  • 新規の成立:なし。第221回国会(特別会)は令和8年7月17日に会期末を迎えており、以後の新規成立はなし(上記3件の成立日はいずれも会期末までのもので、今回はその「公布」を報告)。
  • 新規の施行:本期間(7/23〜7/24)に施行日が到来した重要な改正法は、公的機関サイト上で確認できませんでした。上記3の国旗損壊処罰法は令和8年8月13日施行(施行間近)。
  • 法律番号・公布日は官報(号外第163号・第164号)目次で確認済み。改正内容・施行期日は参議院議案要旨(公的機関サイト上の原典)に基づきます。官報本文の条文(附則)はPDF画像のため条文番号レベルの照合は行っていません。
  • 内閣法制局「公布法律一覧」は令和8年7月17日現在の表示にとどまり、法律第63号〜第72号は未反映です(本速報は官報目次・参議院議案要旨で確認)。
  • 参考:本日(7/24)本紙第1754号に「金融分野における個人情報保護に関するガイドラインの一部を改正する件」(個人情報保護委・金融庁告示)が掲載されていますが、法律改正ではなく告示のため本速報の件数には計上していません。

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。