弊所FAQ23~和解・示談の効力~
Q 和解や示談をした場合の効力について教えてください。
A まず、民事事件としては、原則として和解書や示談書に書いたこと以外は請求できなくなります。刑事事件としては、別途、「刑事処分を求めない」等の条項がないと、刑事処分を受ける可能性はありますが、やはり、有利になることが多いです。
【解説】
和解や示談をした場合、通常、和解書や示談書を作成します。そうすると、和解書や示談書に記載した内容以外は、請求できなくなります。
たとえば、Xさんが、Yさんから500万円の仏像を盗んだ窃盗事件が発生したとします。ここで、XさんとYさんが「XがYに仏像を返す。XY間の争いをやめる(=YはXに仏像以外は請求しない。)」という和解書を交わした場合、原則として、Yさんは、Xさんに対し、仏像以外は請求できません。
たとえば、窃盗事件によって、実は、Yさんに仏像以外の損害が発生していたとしても(たとえば、仏像を盗まれた際に、鍵も壊されており、鍵の修理代も発生している等)、原則として、仏像以外は請求できなくなります。
これは、民事裁判でも同じです。仮に、Yさんに仏像以外の損害があることを、Yさんが立証したとしても、裁判官は、Xさんに対し「仏像を返しなさい」という判決しか下してくれないのが原則です。
ただし、刑事事件ですと少し異なります。法律上、民事事件と刑事事件は、原則として別物と扱われます。そのため、Yさんとしては、「民事事件として争いをやめたが、刑事処分は求める。」という希望を述べることは可能です。
したがって、単に、「XがYに仏像を返す。XY間の争いをやめる(=YはXに仏像以外は請求しない。)」というだけの和解書を交わしたの場合、YさんはXさんに対し仏像以外のものは請求できなくなります。しかし、Yさんは、警察や検察に『仏像は返ってきたが、Xさんのことは許せないので、処罰してほしい』と述べることは可能です。
もし、Xさんが、刑事処分まで勘弁してほしいと思った場合、和解書の中に、「刑事処分を求めない」「被害届を提出しない」等、別途刑事事件についても許したことがわかる条項を入れてもらう必要があります。
ただし、仮に入っていなくとも、仏像を返したことはXさんにとって有利な事情として扱われる可能性が高いです。
たとえば、500万円の仏像を盗んで返さなかった場合には、前科が無くても実刑になる可能性が高いです。
反面、500万円の仏像を盗んで、「XがYに仏像を返す。XY間の争いをやめる(=YはXに仏像以外は請求しない。)」というだけの和解書を交わして仏像を返した場合には、前科がなければ、執行猶予になる可能性が高まります。
ちなみに、和解書の中に、「刑事処分を求めない」「被害届を提出しない」等、刑事事件についても許したことがわかる条項が入った場合、前科がなければ、不起訴になる可能性が出てきます。
というように、和解書・示談書の効力は、民事と刑事で少し異なるというお話でした。