弊所FAQ18~「訴えの取下げ」とは?~

Q 先日、某有名人の方と、某出版社の方の裁判につき、某有名人の方が、訴えを取り下げたと聞きました。訴えを取り下げるとは、どういう意味でしょうか。

A 法的にいえば、裁判自体を無かったことにするということです。つまり、どちらが勝ったのか、負けたのかは分からないままということになります。

【解説】

先日、先日、某有名人の方と、某出版社の方の裁判につき、某有名人の方が、訴えを取り下げたというニュースが報じられました。

これにより、いろんな憶測が飛び交っているように思います。しかし、法的にいえば、訴えの取下げは、裁判自体を無かったことにする効果しかありません(民訴法262条1項)。つまり、勝ち負けなしというわけです。

というのも、訴えの取下げは、確かに、原告(某有名人の方)が申し立てるのものです(厳密にいえば「申立」という文言はそぐわないように思いますが、分かりやすく「申立」と表記します。)。

そのため、「原告が請求を断念した→原告の負け」という解釈をされる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、原告が、訴えの取り下げを申し立てた後、被告(某出版社の方)が同意しなければ、訴えの取下げは認められません(民訴法261条2項)。
つまり、「裁判で勝てる自信があれば、同意しないはず→でも被告は同意した→だから被告の負け」という解釈をされる方もいらっしゃるでしょう。

このように、報道からでは、いかようにも解釈できます。いかようにも解釈できるということは、結論は断定できないという意味です。

ちなみに、私の経験だけでいうと、訴訟外で和解を成立させ、かつ、和解内容が履行された場合には、訴えを取り下げることがあります。もちろん、訴訟で和解することも可能ですが、訴訟外での和解を希望される方も一定数いらっしゃいます。

基本的に、訴訟で和解をするメリットは、和解内容が履行されない場合に、強制執行ができるようになるといういものです。したがって、ちゃんと履行してくれるのであれば、訴訟外の和解でも、訴訟での和解でも、大差ありません。

そのため、当初、某有名人の方の訴え取り下げニュースを耳にした際、私は「和解したのだろうか?」と思いました。しかし、和解成立というわけでもなさそうです。

ということで、訴えの取下げというニュースからでは、何も断定できないというお話でした。