応急修理制度は修理前の申請を

さて、準半壊以上の方が対象となりうる支援が、「応急修理制度」です。

静岡市のウェブサイトを見ると、応急修理制度を利用する要件の一つに資力が挙げられています。
しかし、応急修理制度における資力は、かなり緩やかに解釈されています。したがって、事実上、準半壊以上の罹災証明書を取得した方は、応急修理制度を使える可能性があると考えていただいて構いません。

罹災証明書と一緒に案内されることが多いため、応急修理制度に対する被災者の皆様の関心も高いように見受けられます。

ただ、いくつか注意点がありますので、申し上げます。

1 修理「前」に静岡市に申請しなくてはならない。

2 静岡県の借り上げ型応急住宅(いわゆるみなし仮設住宅)に原則として入れなくなる。

3 対象範囲が複雑

以下、ご説明いたします。

まず、応急修理制度は、静岡市が修理業者と契約し、静岡市が修理業者に直接代金を支払うという形の制度です。したがって、被災者の方が直接修理業者と契約すると、応急修理制度から外れることになります。

したがって、もし、応急修理制度を使いたいと思ったら、修理の見積書と罹災証明書を持って、市役所の被災者支援窓口に行っていただくのが、基本的な形です。

ただ、そうはいっても、「修理しなかったら住めないので、もう、修理してしまった。」という方も多くいらっしゃると思います。
その場合、修理代金を支払う前であれば、市役所が何とかしてくれることがあります。もし、修理してしまったけれども、まだ代金を支払っていないという場合には、あきらめず、直ちに、被災者支援窓口に行ってください。
もし、修理代金を支払ってしまった後となると、残念ながら、応急修理制度は使えないようです。

また、応急修理制度を使うと、静岡県の借り上げ型応急住宅(いわゆる仮設住宅)には、原則として入れなくなります。半壊以上の方は、静岡県の借り上げ型応急住宅の制度を使うと、最長2年入れることになっています。しかし、応急修理制度を使った方は、最長2年の応急住宅には入れなくなるというわけです(例外として、発災から半年以内に退去するのであれば、静岡県の応急住宅に入れる可能性はあります。)。

そのため、静岡県の借り上げ型応急住宅への入居を検討されている方、つまり、仮設住宅に、発災から半年を超えて入居したいと考えている方は、応急修理制度を使うか否かは、よくお考えになった方が良いといえます。

なお、応急修理制度を使うと公費解体の対象外にもなります。ただ、台風15号で公費解体の対象になる方は、ごく僅かなので、あまり気にしなくてもよいでしょう。台風15号では、解体費用は自費が原則とお考えください。

そして、応急修理制度は、上限が、31万8000円(準半壊の方)または65万5000円(半壊以上の方)と決まっています。しかし、上限を超えたら自己負担になるというだけです。上限を超える工事には一切使えないという意味ではありません。
たとえば、半壊の方が100万円の修理工事を考えていらっしゃるとします。その場合、65万5000円分を静岡市と契約し、残り34万5000円分を被災者と契約するという形を修理業者が認めてくれるのであれば、応急修理制度は使えるという意味になります。

そういう意味では、既に修理工事が終わり、お金を支払ってしまった後でも、もし、別のところを修理したくなり、その修理箇所が、応急修理制度の対象であれば、支援を受けられる可能性があるといえます。

ただ、応急修理制度の対象となる箇所については、ものすごく複雑です。

一応、静岡市が、工事例Q&Aを出しています。しかし、正確に把握するのは困難です。
確実にいえることは、畳の交換のみや、壁紙の交換のみでは応急修理制度の対象外ということです。
壁紙は、剥がせば住めなくもないので辛うじて納得できます。
しかし、畳は交換しないと住めないのに、畳交換のみでは応急修理制度の対象外となっているのは違和感を覚えるところです。

不正確を承知で申し上げると、住宅という建物の一部を破壊しないと外せないもの(柱や壁など)については応急修理制度の対象となるものの、畳や壁紙など、建物を破壊しなくても取り外し可能なものは応急修理制度の対象外になることが多いような気がします。

ただ、給湯器は応急修理制度の対象となるなど、やはり、一言で正確に説明するのは難しいです。

ちなみに、ここまで申し上げると、「では、とりあえず応急修理制度の対象外となりそうな工事から進めて、応急修理制度の対象となりそうな工事については、後日申請しよう。」とお考えになる方もいらっしゃるかも知れません。理論上は、可能です。

しかし、実際に、応急修理制度の対象となるか否かを正確に区別するのは難しいので、とにかく、まずは、応急修理制度について市役所の被災者支援窓口でご相談されることを強くお勧めします。

応急修理制度は、お手軽なようで意外と複雑です。正確な情報を得たうえで、じっくり検討してください。