技能実習生制度自体はホワイト3
前回、「技能実習生の受け入れ企業は、労働法以上に厳しい監査を受けなければならない」と申し上げました。
では、前回申し上げた規定に、受入企業が違反した場合は、どうなるのでしょうか。
法令違反をすると、現在・未来の技能実習生全てが受入不可となる可能性がある
たとえば、X社が、A・B・C3名の技能実習生を受け入れているとします。
ここで、X社が、技能実習生Aのパスポートを預かっていたとしましょう。
パスポートを預かる行為は、技能実習法48条1項違反です。
したがって、出入国または労働に関する法令に関し不正をしたことになり、技能実習生Aに関する実習計画の認定が取り消される可能性があります(技能実習法16条1項7号)。
(認定の取消し等)
第十六条 主務大臣は、次の各号のいずれかに該当するときは、実習認定を取り消すことができる。
七 出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき。
第1回目で、軽くしか触れていませんでしたが、技能実習生も、外国人である以上、在留資格を得なければなりません。
そして、技能実習生は、認定された実習計画の認定を取り消されると、在留資格を失う可能性が出てきます。
なぜなら、「技能実習」という在留資格は、認定を受けた技能実習計画に基づいた活動をしていることが前提となっているからです。
入管難民法別表1の2
一 次のイ又はロのいずれかに該当する活動
イ 技能実習法第八条第一項の認定(技能実習法第十一条第一項の規定による変更の認定があつたときは、その変更後のもの。以下同じ。)を受けた技能実習法第八条第一項に規定する技能実習計画(技能実習法第二条第二項第一号に規定する第一号企業単独型技能実習に係るものに限る。)に基づいて、講習を受け、及び技能、技術又は知識(以下「技能等」という。)に係る業務に従事する活動
先ほどの例において、技能実習生Aに関する実習計画の認定を取り消されると、技能実習生Aは、認定を受けた技能実習計画に基づいた活動をしていないことになります。
したがって、 技能実習生Aの在留資格が取り消される可能性があります(入管難民法22条の4第5号ないし第6号)。
(在留資格の取消し)
第二十二条の四 法務大臣は、別表第一又は別表第二の上欄の在留資格をもつて本邦に在留する外国人(第六十一条の二第一項の難民の認定を受けている者を除く。)について、次の各号に掲げるいずれかの事実が判明したときは、法務省令で定める手続により、当該外国人が現に有する在留資格を取り消すことができる。
五 別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者が、当該在留資格に応じ同表の下欄に掲げる活動を行つておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうとして在留していること(正当な理由がある場合を除く。)。
六 別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者が、当該在留資格に応じ同表の下欄に掲げる活動を継続して三月(高度専門職の在留資格(別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄第二号に係るものに限る。)をもつて在留する者にあつては、六月)以上行わないで在留していること(当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除く。)。
また、受入企業についても、認定取消を受けた実習生Aについて実習を続けると、認定を受けた技能実習計画に基づいていない外国人を就労させたことになり、不法就労助長罪が成立します。
そのうえ、1件でも認定取消を受けると、取消の日から5年間は、新しく技能実習計画の認定を受けることができません(技能実習法10条6号)。
要するに、5年間は、技能実習生を受け入れ出来なくなるのです。
(認定の欠格事由)
第十条 次の各号のいずれかに該当する者は、第八条第一項の認定を受けることができない。
六 第十六条第一項の規定により実習認定を取り消され、当該取消しの日から起算して五年を経過しない者
技能実習法10条は、「認定を受けることができない。」と言い切っています。「認定をされないことがある」等、例外を規定していません。
したがって、絶対に、5年間は受入不可となります。
しかも、現在の、他の実習生に関する技能実習計画まで取り消される可能性があります(技能実習法16条3号)。
(認定の取消し等)
第十六条 主務大臣は、次の各号のいずれかに該当するときは、実習認定を取り消すことができる。
三 実習実施者が第十条各号のいずれかに該当することとなったとき。
つまり、先ほどの例でいえば、パスポートを預かっていない技能実習生B・Cの計画まで取り消される可能性があるのです。
このように、法令違反をすると、ABC全ての技能実習生の受け入れが不可となる可能性が出てきます。
技能実習も契約です。受け入れ企業は、「技能実習生ABCを働かせる」という契約上の義務を負っています。それなのに、受入不可となると、受け入れ企業は契約違反をしたことになります。契約違反ともなれば、多額の損害賠償を請求される危険性が出てくるでしょう。
このように、技能実習制度における、法令違反に対する制裁は大きいです。技能実習制度を正確に捉えて、ホワイトな運用を目指してください。