民法改正講義案6(賃貸借3)-大家が動かなければ店子が動くー
3 賃借人が賃貸人の代わりに修繕できる場合がある
【第607条の2】
賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
二 急迫の事情があるとき。
(1)ひとこと解説
大家が修繕してくれない場合には、店子が修理できる場合があります。
(2)詳細解説
原則として、賃貸目的物の修繕義務は、賃貸人(=大家さん)が負います。しかし、一定の場合には、賃借人(=店子)が修繕でき、賃借人は修繕費用を賃貸人に請求できるようになったのです。
もっとも、この条文は、賃借人が修繕できることに意味があるというより、賃借人が修繕できる条文を入れることによって賃貸人の修繕を促すことに意味があるようです。
つまり、賃貸目的物(=建物や部屋)の所有権は、たいていの場合、賃貸人が持っています。修繕のためとはいえ、自分所有の建物を賃借人にいじられるのは、いい気分がしません。そこをあえて「賃借人が修繕しても良い」という条文を入れ込むことにより、間接的に賃貸人に修繕させるよう促すことにしたのです。つまり、「大家があんまり動かないようならば、店子は勝手に修繕しても良いことにする」というプレッシャーを与えることにより、大家に修繕を促す条文ができました。
なお、旧法でも、賃貸人に修繕義務自体はありました。
(3)例
ア 1号の例
借りているアパートの部屋に壁に穴が開いたので、店子が内容証明郵便等で大家さんに修繕を求めました。しかし、、長期間、大家さんは修繕しませんでした。この場合、、賃借人は、壁を修理できようになるのです。
イ 2号
台風が直撃し、突然、急に雨漏りがしてきたとします。その場合、店子が、賃貸人に告げることなく、雨漏りの応急処置ができます。