【判例速報】最高裁・訴因変更による併合罪事実の追加と「審判の請求を受けない事件」/知財高裁・書籍重刷とメールでの許諾ほか計5件(2026年10月7日)

裁判所ウェブサイトの新着裁判例のうち、当サイトの過去の速報で未報告のものは5件です(インターネット関連分野に直接該当するものは0件。うち1件は未精査)。

※裁判所サイトには掲載日(公開日)が表示されないため、裁判年月日ベースで直近の新着分を確認しています。
※2・3件目は裁判年月日が2週間をやや超え、4件目は約2か月前ですが、新着一覧に掲載され当サイト未報告のため掲載しました。

1.最高裁・訴因変更で追加された併合罪事実と「審判の請求を受けない事件」(令和8年10月5日)

  • 裁判所:最高裁判所第二小法廷(判決)
  • 事件番号:令和7(あ)868 窃盗、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件
  • 結果:破棄差戻し(原審:大阪高裁 令和7年6月5日判決、第1審:京都地裁)

事案の概要
ATMからの現金窃取2件(当初訴因)で起訴された後、公訴提起のないまま、併合罪関係にある別のATM窃取4件が訴因変更手続により追加され、第1審・原審はこれらを含めて審理判決しました。

判断の要旨
追加訴因は当初訴因と公訴事実の同一性がなく、本来別罪として公訴提起されるべきもので、訴因変更による追加を許可したのは刑訴法312条1項の解釈適用の誤りであるとしました。追加訴因について判決した第1審判決・原判決には「審判の請求を受けない事件について判決をした違法」(刑訴法378条3号後段)があり、同法411条1号により破棄を免れないと判示しました。裁判官全員一致。三浦守裁判官の補足意見(この違法は被告人の不利益の程度やその同意によって左右される問題ではない旨)があります。

実務上のポイント
追起訴すべき別罪を訴因変更で処理した場合、被告人の同意があっても上告審で破棄されうることが確認されました。刑事弁護では、訴因変更請求に対し公訴事実の同一性を必ず確認すべきです。

出典:裁判所ウェブサイト(裁判例詳細)/判決文PDF

2.知財高裁・実用書の重刷とメール通知による許諾(著作権)(令和8年9月17日)

  • 裁判所:知的財産高等裁判所 第1部
  • 事件番号:令和8(ネ)10039 損害賠償請求控訴事件
  • 結果:控訴棄却(原審:東京地裁 令和6(ワ)70056、請求全部棄却)

事案の概要
ツボ押しに関する実用書の著作者が、出版社による2刷以降の重刷は複製権侵害に当たるとして、約2978万円の損害賠償を求めました。

判断の要旨
出版社は平成30年3月以降、増刷の都度、著作者にメールで増刷予定を伝え、著作者から異議がなかったことから、重刷について都度の許諾があったと認め、著作権侵害を否定しました。

実務上のポイント
出版契約が重刷をカバーするか不明確な場合でも、メールによる増刷通知と異議の不述が許諾認定の根拠となりえます。著作者側は異議を速やかに明示しておく必要があります。なお、インターネット上の利用に関する判示は判決文上見当たりません。

出典:裁判所ウェブサイト(裁判例詳細)/判決文PDF

3.東京地裁・事業譲渡契約の「商標登録に至らなかった場合」と移転登録未了(令和8年9月18日)

  • 裁判所:東京地方裁判所
  • 事件番号:令和7(ワ)70697 商標権移転登録手続等請求事件
  • 結果:請求棄却

事案の概要
インターネットコンテンツ開発等を営む原告が、事業譲渡契約により被告からポートレート撮影会事業(「kawaii collection」「カワコレ」)と出願中の商標4件を譲り受けました。原告は、商標権の移転登録が未了であることが契約7条2項の「商標登録に至らなかった場合」に当たるとして、1200万円の支払を求めました。

判断の要旨
同項の「商標登録に至らなかった場合」は設定登録がされなかった場合を意味し、移転登録の未了は含まないと解釈しました(同項後段が再出願を前提とした内容であることとも整合)。本件各商標は期限前に設定登録されており、要件に該当しないとしました。

実務上のポイント
事業譲渡契約で出願中商標を扱う場合、「登録」が設定登録か移転登録かを明確にし、移転手続の履行義務と違約金条項を書き分けておく必要があります。

出典:裁判所ウェブサイト(裁判例詳細)/判決文PDF

4.札幌地裁・強盗致死と奪取カードの不正使用(無期懲役・懲役30年)(令和8年8月7日)

  • 裁判所:札幌地方裁判所
  • 事件番号:令和7(わ)8 強盗致死、詐欺、詐欺未遂、窃盗被告事件

事案の概要(裁判所公表の要旨による)
共犯者4名と共謀して被害者に暴行を加えて金品を奪い、放置して外傷性ショックにより死亡させた上、奪ったクレジットカードで煙草等を購入し、その後別の共犯者らと協力して被害者名義のキャッシュカードで現金を引き出した事案です。

判断の要旨
主犯に無期懲役、次に暴行を加えた被告人に懲役30年を宣告しました。

実務上のポイント
強盗致死事案における共犯者間の量刑の差の付け方の一例です。インターネット関連業務への直接の影響はありません。
※量刑理由の詳細は未精査です(判決文PDFは未確認)。

出典:裁判所ウェブサイト(裁判例詳細)/判決文PDF

5.東京高裁・損害賠償請求控訴事件(令和8年9月3日)【未精査】

  • 裁判所:東京高等裁判所 第2民事部
  • 事件番号:令和8(ネ)1067 損害賠償請求控訴事件(原審:東京地裁 令和6(ワ)18712)

詳細ページに結果・判示事項の記載がなく、判決文PDFも今回の調査では内容を読み取れなかったため、事案・判断内容は未精査(原典内容未確認)です。

出典:裁判所ウェブサイト(裁判例詳細)/判決文PDF

出典

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。