弊所FAQ12~一括借り上げの注意点~
Q 不動産業者から「空いている土地にアパートを建てませんか。お建てになったアパートは、弊社が一括借り上げします。」と言われました。注意点について教えてください。
A 注意点は色々あると思います。ただ、一番注意しなければならないのは、賃料の見直しが何年ごとになっているかという点だと考えます。なお、万一、賃料の見直し規定が無いとしても、借地借家法32条で賃料の見直しは可能であることにもご注意ください。あと、変動金利の場合は、金利にもご注意ください。
【解説】
法律相談をしていると、時々、「一括借り上げの約束でアパートを建てようと思います。(建てました。)。」とおっしゃる方に出会います。
そのようにおっしゃる方の中には、「一括借り上げ期間中は、賃料が一切変更されない。」と思い込んでいる方がいらっしゃいます。
ただ、私の経験上、長くとも10年ごとに賃料の見直し規定が入っていることが多いです。つまり、例えば「30年一括借り上げ」だとしても、10年後には、賃料が下がる可能性があるという訳です。
ちなみに、短いと、毎年見直すという規定になっている契約書もあります(さすがに、「半年ごとに見直す」という契約には出会ったことがありません。)。体感では、2年ごとに見直すということになっている契約が一番多いように感じます。
なお、仮に、賃料の見直し規定がないとしても、借地借家法32条が適用され、賃料の減額請求を受ける可能性があります(最判平成15年10月21日)。
さらに、アパートをローンで建てている場合は、もう一つ注意しなければならないことがあります。それは、金利です。もちろん、固定金利であれば良いのですが、変動金利だと注意が必要です。
変動金利は、文字どおり、金利が変動しうる契約です。そして、変動金利の契約の中には、「初めの10年は安めの変動金利、10年後からは通常の変動金利」という契約もあります。実際には、「初めの5年は安めの変動金利、5年後からは通常の変動金利」の方が多いかも知れません。
そうなると、たとえ賃料の見直しが10年ごとであっても、「10年後から金利は上がり、賃料は下がる。」というダブルパンチに見舞われる場合がありうるということになります。このダブルパンチを食らうと、収支が赤字になるリスクすらありえます。
したがって、一括借り上げを前提にアパートを建てる場合には、賃料の見直しタイミングと、変動金利にご注意くださいというお話でした。