民法改正講義案5(保証5)-「絶対迷惑かけないから」は、もう無理?-
「絶対迷惑かけないから」といって保証人をお願いすることが、できなくなるかも知れません。
5 事業債務の主債務者は保証人に情報提供必須
【第465条の10】
1 主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。
一 財産及び収支の状況
二 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
三 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容
2 主たる債務者が前項各号に掲げる事項に関して情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をした場合において、主たる債務者がその事項に関して情報を提供せず又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り又は知ることができたときは、保証人は、保証契約を取り消すことができる。
(1)ひとこと解説
事業資金を借り入れる際に、お金を借りる人は、保証人に収支の状況などを知らせなければいけません。知らせていない場合、保証契約を取り消せる場合があります。
(2)詳細解説
そもそも、保証人は、お金を借りていないのに、お金を返す義務を負いかねない危険な立場です。それが事業資金ならば、返すお金が多額になりやすく、危険度はアップします。そんな危険な立場に立たせようというのですから、保証人が適正な判断を行えるよう、事業資金を借り入れる人は、収支の状況などについて保証人(もちろん、「保証人になろうとする人」も含みます。)に情報提供をしなければならないことになりました。
もし、お金を借りる人が、保証人に対し、虚偽の情報提供をするか、そもそも情報提供をしなかった場合、その旨を債権者が知っているか知りえた場合には、保証契約を取り消すことができることになりました。「情報提供をしなかった場合」も含むので、単に「大丈夫、絶対迷惑をかけないから」とだけいって保証人をお願いすることもできなくなるのです。
なお、取り消せるとしても、あくまで保証契約だけ取り消せます。お金を借りる契約は残ります。つまり、保証人不存在の借金が残るというわけです。
(3)注意点
恐らく、新法施行後は、事業資金の保証人欄に「債務者(=お金を借りる人)から、収支の状況などを正確に聞きました」などと書かされたり、チェックを入れるよう、求められることになるでしょう。
仮に、債務者(=お金を借りる人)が、情報提供をしなかったとしても、情報提供をしていなかったことを債権者が知らなければ保証契約を取り消せないからです。「正確に聞きました」などと書いては、債権者に「まさか情報提供を受けていないとは知らなかった」と言い逃れをさせてしまいます。
しかし、せっかくここを読んでくださった皆様は、安易に、「正確に聞いた」とか書いたり、チェックを入れたりしないよう、ご注意ください。