民法改正講義案4(売買7)-契約不適合はいつまでに売主に連絡すればいい?-

7 契約不適合を知ってから1年以内に通知が必要

【第566条】
売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

(1)ひとこと解説

買主は、契約不適合を知ってから1年以内に通知しないと、債務不履行責任を追及できません。

(2)詳細解説

旧法の瑕疵担保責任では、瑕疵を見つけてから1年以内に「請求」しないといけませんでした。しかし、新法では、契約不適合を知ってから1年以内に、契約不適合を「通知」すれば、債務不履行責任を追及できるようになったのです。つまり、損害額を立証しなくても、1年以内に「不適合があった」とさえ言えばよいことになります。

(3)例

中古車を買ったところ、すぐにエンジンに重大な不具合があることに気づきました。それでも、騙し騙し乗っていたところ、11か月後に修理が必要になったとします。修理には3か月かかるということで、今のところ、損害額がいくらになるのか分からないとしましょう。この場合、12か月経つ前に、中古車屋に対し、「エンジンに重大な不具合あり。修理が必要。」とだけいえば足りることになりました。旧法では、12か月経つ前に、損害額まで立証して請求しなければならなかったのです。

(3)補足

ア 166条は排除されない

なお、566条が適用されても、166条の適用が排除されるわけではありません。したがって、契約不適合を知った時から(通知からではありません。)5年以内に「請求」などをして、時効の更新・完成猶予をしなければ消滅時効が完成してしまいます。「通知」さえすれば、永久に請求できるという訳ではありません。

【第166条】
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき

イ 数量不足は566条の適用なし

566条に「数量」が入っていないことに注意してください。数量不足は、166条のみが適用されることになります。数量不足は客観的なので、わざわざ通知を挟む必要がないという考えなのかも知れません(私見)。

ウ 請負も、似たような条文に改正される

【第637条】
1 前条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。

2 前項の規定は、仕事の目的物を注文者に引き渡した時(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時)において、請負人が同項の不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、適用しない。