【判例速報】最高裁・死刑確定者の面会立会いと期日出頭不許可の国賠請求ほか計5件(2026年10月31日)

裁判所ウェブサイトの新着裁判例のうち、当サイトの過去の速報で未報告のもの5件を取り上げます(インターネット関連分野に直接該当するものは0件です)。裁判所サイトには掲載日(公開日)が表示されないため、裁判年月日ベースで直近の新着分を確認しています。各判例は、裁判所ウェブサイトに掲載された判決文に基づいて要約しています。

1 最高裁第二小法廷 令和8年10月30日判決(令和7年(受)第39号、第40号)

事件名:損害賠償請求事件/原審:名古屋高等裁判所(令和4年(ネ)第1045号)

事案の概要

名古屋拘置所に収容されている死刑確定者(第1審原告)が、平成30年1月から令和3年7月にかけて合計61回、司法書士(本件司法書士)と面会した際、拘置所長が職員の立会いのない面会とすることを許さなかった措置と、面会の際の職員の言動が違法であるとして、国(第1審被告)に対し、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料等を求めた事案です。原審は、61回のうち4回の面会に係る措置と、2回の面会での職員の言動を違法として、請求を一部認容していました。

判決の内容

  • 主文:第1審原告の上告を棄却し、原判決中、国の敗訴部分を破棄し、その部分につき第1審原告の控訴を棄却しました(裁判官全員一致)。
  • 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律121条は、死刑確定者の面会に職員を立ち会わせることを原則とし(本文)、「死刑確定者の訴訟の準備その他の正当な利益の保護のため」立会い等をさせないことを適当とする事情がある場合において、相当と認めるときは、立ち会わせないこと等ができるとしています(ただし書)。判決は、立会いのない面会を許さない措置が裁量権の範囲の逸脱・濫用となるためには、「上記面会を職員の立会いのないものとすることを許すことが特に必要であるというべき事情があることを要する」としました。
  • 本件の面会は、拘置所での処遇に係る別件の国家賠償請求訴訟の打合せ等を目的とするものでしたが、判決は、本件司法書士がそれらの訴訟について「訴訟代理人となる資格を有しない者であった」ことから、立会いのない面会をする利益を「保護すべき必要性が高いものであったということはできない」とし、各措置も職員の言動も国家賠償法1条1項の適用上違法ではないとしました。

実務上のポイント

  • 死刑確定者の面会への職員の立会いについて、立会いのない面会を許さない措置が違法となるのは「特に必要」な事情がある場合であるとの判断枠組みを示した最高裁判決です。面会の相手方が当該訴訟の訴訟代理人となる資格を有するかどうかが、判断の要素とされています。

出典:裁判所ウェブサイト(判例ページ)/判決文PDF

2 最高裁第二小法廷 令和8年10月30日判決(令和7年(受)第172号、第173号)

事件名:損害賠償請求事件/原審:名古屋高等裁判所(令和5年(ネ)第484号)

事案の概要

名古屋拘置所に収容されている死刑確定者(第1審原告)が、自ら提起した民事訴訟の口頭弁論期日に出頭することを拘置所長が許可しなかった措置が違法であるとして、国(第1審被告)に対し、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料等を求めた事案です。不許可の措置は、平成29年1月から令和2年7月にかけての合計47回(本件措置1~47)と、第1審原告が訴訟代理人を選任せずに追行していた別件の国家賠償請求訴訟の控訴審で、第1審原告が自ら証人に質問することが予定されていた証人尋問期日(令和5年12月1日及び同月6日)についての2回(本件措置48等)です。控訴審裁判所は、拘置所長に対し、出頭の可否について再度検討を求める事務連絡を送付していました。原審は、本件措置48等を憲法32条に違反し違法として、請求を一部認容していました。

判決の内容

  • 主文:第1審原告の上告を棄却し、原判決中、国の敗訴部分を破棄し、その部分につき第1審原告の原審における追加請求をいずれも棄却しました(裁判官全員一致)。
  • 判決は、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律には死刑確定者が自ら提起した民事訴訟の期日に出頭できる場合を定めた規定はないものの、その許否は刑事施設の長の裁量に委ねられているとし、不許可の措置が裁量権の範囲の逸脱・濫用となるのは「死刑確定者が当該期日に出頭することが特に必要であるということができる場合に限られる」としました。
  • 本件措置48等については、証人に対する質問は訴訟代理人や裁判官も行うことができるとし、別件訴訟の内容・性質に照らしても、第1審原告の質問が「訴訟代理人等によるものでは代替し得ないものであったというべき事情はうかがわれない」として、控訴審裁判所が再度検討を求めたことを考慮しても、出頭が特に必要であったとはいえず、違法ではないとしました。

実務上のポイント

  • 死刑確定者本人の民事訴訟期日への出頭について、受訴裁判所が出頭の可否について再度検討を求めていた場合でも、出頭が「特に必要」でなければ不許可は違法とならないとした事例です。代替手段(訴訟代理人・裁判官による質問)の有無が判断の要素とされています。

出典:裁判所ウェブサイト(判例ページ)/判決文PDF

3 東京地裁 令和8年6月17日判決(平成29年(ワ)第40008号)

事件名:損害賠償請求事件

事案の概要

横浜市内のマンション(地上12階建て、総住戸数705戸)の建築工事について、発注者としての権利を承継した原告が、建築工事を請け負った被告三井住友建設、杭工事を被告三井住友建設から請け負った被告日立ハイテク、同工事を被告日立ハイテクから請け負った被告旭化成建材に対し、杭の施工の誤りと施工記録の改ざんによって全棟建替えを余儀なくされたとして、全棟建替えに要した費用等の損害の一部である505億5673万8094円等の支払を求めた事案です(被告三井住友建設に対しては、予備的に瑕疵担保責任又は債務不履行責任に基づく請求もしています)。

判決の内容

  • 主文:被告三井住友建設と被告日立ハイテクは、それぞれ他の被告らと連帯して、13億4366万5483円及びこれに対する平成19年11月30日から年5分の割合による金員を支払え。被告旭化成建材は、13億4366万5483円及び遅延損害金の限度で他の被告2社と連帯して、13億9611万1973円及びこれに対する同日から年5分の割合による金員を支払え。原告のその余の請求(被告三井住友建設に対する予備的請求を含む。)は棄却。
  • 判決は、全棟建替えを決議した時点までに判明していた調査結果・検証結果を検討しても、「全棟建替えが必要な状況にあったとは到底認めることはできない」とし、全棟建替えの費用は損害と認めず、補修を行う場合の損害を算定しました。
  • 判決は、D棟の杭の支持層未到達・根入れ不足及びB3-17の杭の溶接不良に係る被告らの共同不法行為等と相当因果関係のある損害として、D棟の補修費用11億2000万円、B3-17の杭の補修費用1億3333万円、説明会費用2633万5483円、弁護士費用6400万円(合計13億4366万5483円)を認めました。被告旭化成建材は、これに加えて、施工記録の改ざんによる不法行為について、調査費用の一部(879万6384円、4115万0106円)と弁護士費用250万円の責任を負うとされました。
  • C棟の根入れ不足杭については、被告三井住友建設の瑕疵担保責任上の瑕疵に当たり損害額は9432万9000円と認めたものの、商事消滅時効の援用により損害賠償請求権は消滅したと判断しました。また、被告三井住友建設は、施工記録の改ざんによる不法行為責任及び債務不履行責任を負わないとしました。

実務上のポイント

  • 施工不良が判明したマンションについて、主位的請求額505億5673万8094円に対し、認容額は補修費用等を基礎とする13億4366万5483円(被告旭化成建材については13億9611万1973円)にとどまりました。判決は、被告らが全棟建替えを基本的な枠組みとする方針を了承していなかったにもかかわらず原告がその方針を維持したことを「過剰な対応であった」と評価しており、建替え等の費用を他者に求償しようとする場合の事前協議の重要性を示す事例です。

出典:裁判所ウェブサイト(判例ページ)/判決文PDF

4 東京地裁 令和8年6月23日判決(令和6年特(わ)第77号)

事件名:政治資金規正法違反被告事件

事案の概要

本件当時参議院議員であった被告人Aが代表を務める資金管理団体D会の収支報告書に、F党所属の国会議員を主な構成員とする政治団体E会から交付された現金(政治資金パーティーのノルマ超過分に相当する金銭。判決は「交付金」と呼んでいます)が記載されていなかったことについて、被告人Aと、D会の会計責任者の職務を補佐していた被告人B(被告人Aの政策担当秘書)が、平成30年分から令和4年分までの収支報告書の虚偽記入で起訴された事案です。

判決の内容

  • 主文:「被告人Aを罰金60万円に、被告人Bを罰金20万円に処する。」罰金を完納できないときは5000円を1日に換算した期間、労役場に留置。訴訟費用の5分の1を被告人両名の連帯負担とする。公訴事実中、第1ないし第4(平成30年分から令和3年分)については、被告人両名は無罪(求刑は被告人Aにつき罰金150万円、被告人Bにつき罰金50万円)。
  • 判決は、交付金がD会に対する寄附に当たると判断しました。そのうえで、令和4年分については、E会から勉強会等の売上げに付け替えるように依頼されたことなどを踏まえ、被告人両名とC(D会の会計責任者の職務を補佐していた者)との間で交付金を収支報告書に記載しないための具体的な方策についてやり取りがあったことなどから共謀を認め、E会からの1120万円の寄附を含む寄附額が少なくとも1250万円であったのに、寄附の合計を130万円と虚偽記入したとして有罪としました。
  • 平成30年分から令和3年分については、被告人両名が意思連絡をしていなかった可能性が否定できず、「被告人両名の共謀は認められない」としました。

実務上のポイント

  • 政治団体から所属議員側に現金で渡されたパーティー券のノルマ超過分相当額を資金管理団体への寄附と認めつつ、令和4年分と平成30年分から令和3年分とで、交付金の取扱いについてのE会からの具体的な依頼や被告人両名の間の直接のやり取りの有無に違いがあるとして結論を分け、一部の年分を無罪とした事例です。

出典:裁判所ウェブサイト(判例ページ)/判決文PDF

5 神戸地裁 令和8年3月19日判決(令和6年(ワ)第15号)

事件名:損害賠償請求事件

事案の概要

平成22年10月4日、神戸市北区で、当時16歳の高校生であった被害者Aが、面識のない当時17歳の被告少年にナイフで刺されて死亡した事件について、被害者Aの両親(原告両親ら)と兄姉(原告兄姉ら)が、被告少年とその親権者であった被告両親らに損害賠償を求めた事案です。被告少年は令和3年8月4日に逮捕され、殺人罪で懲役18年の判決を受け、上告棄却により確定しています。原告両親らは刑事手続に付随して損害賠償命令を申し立て、各4656万0685円等を認容する命令が出されましたが、被告少年が異議を申し立てて民事訴訟に移行しました(第1事件)。原告らは、被告両親らの監督義務違反、原告兄姉らの固有の慰謝料、被告少年の逃亡等で事件が長期間未解決となったことによる慰謝料等も請求しました(第2事件)。

判決の内容

  • 主文:第1事件の仮執行宣言付損害賠償命令を認可。第2事件では、被告少年は原告兄姉らに対し各110万円及び平成22年10月4日からの遅延損害金を支払え。原告らの被告らに対するその余の請求はいずれも棄却。
  • 第1事件では、民法709条に基づき、被害者Aの逸失利益4309万5801円、死亡慰謝料3000万円などを認め、原告両親らの損害を各4656万0685円と算定しました(原告両親らの固有の慰謝料は各500万円)。
  • 原告兄姉らについては、被害者Aとの間に民法711条所定の者と実質的に同視し得べき身分関係が存するとして、同条の類推適用により、被告少年に対する慰謝料各100万円と弁護士費用各10万円を認めました。
  • 被告両親らについては、被告少年が事件当時満17歳に達していたことなどから、本件事件に結びつくような監督義務違反があったとはいえないとしました。また、「犯人が検挙されず、事件が長期間未解決であることそれ自体によって直ちに犯罪被害者等の有する上記のような法律上保護された利益を違法に侵害するものとはいえない」として、逃亡等を理由とする請求を棄却しました(判決は、被告母について「客観的にみると、被告少年の逃亡に寄与したといえる」としつつ、責任は否定しています)。

実務上のポイント

  • 損害賠償命令制度を利用した事案で異議後の民事訴訟において命令が認可された例であり、兄姉について民法711条の類推適用による固有の慰謝料を認めた点、加害者の逃亡や事件の長期未解決それ自体を理由とする慰謝料を否定した点が参考になります。

出典:裁判所ウェブサイト(判例ページ)/判決文PDF

出典

  • 最高裁第二小法廷令和8年10月30日判決(令和7年(受)第39号、第40号):https://www.courts.go.jp/hanrei/97225/detail4/index.html / https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-97225.pdf
  • 最高裁第二小法廷令和8年10月30日判決(令和7年(受)第172号、第173号):https://www.courts.go.jp/hanrei/97227/detail4/index.html / https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-97227.pdf
  • 東京地裁令和8年6月17日判決(平成29年(ワ)第40008号):https://www.courts.go.jp/hanrei/97210/detail4/index.html / https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-97210.pdf
  • 東京地裁令和8年6月23日判決(令和6年特(わ)第77号):https://www.courts.go.jp/hanrei/97188/detail4/index.html / https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-97188.pdf
  • 神戸地裁令和8年3月19日判決(令和6年(ワ)第15号):https://www.courts.go.jp/hanrei/97220/detail4/index.html / https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-97220.pdf
  • e-Gov法令検索:刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律121条、国家賠償法1条、日本国憲法32条、民法709条・711条

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。