【判例速報】秋田地裁・市課長が最低制限価格を業者に教示した官製談合事件(2026年10月30日)
裁判所ウェブサイトの新着裁判例のうち、当サイトの過去の速報で未報告のものは1件です(インターネット関連分野に直接該当するものは0件。ただし、入札が電子入札システムで行われた事案です)。裁判所サイトには掲載日(公開日)が表示されないため、裁判年月日ベースで直近の新着分を確認しています。
秋田地裁 令和8年8月5日判決(令和8年(わ)第38号)
事件名:入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反、公契約関係競売入札妨害被告事件
事案の概要
潟上市建設部都市建設課長であった被告人が、同市が令和7年3月25日に入札を執行した「A公園多目的広場夜間照明灯改修工事」の条件付き一般競争入札に関し、株式会社B代表取締役であるCらと共謀の上、同月12日、Cに電話で、秘密事項である設計金額を基に算定した最低制限価格(1億2489万2000円)を教示し、同月24日、Bに電子入札システムにより1億2490万円で入札させ、同月25日に落札させたと認定された事案です。
判決の内容
- 主文:「被告人を懲役1年6月に処する。」「この裁判が確定した日から3年間、その刑の執行を猶予する。」(執行猶予は懲役刑に付されたもの。求刑は懲役1年6月)
- 「量刑の事情」では、被告人が業者側との電話で直接秘密事項を漏示し、業者が最低制限価格に極めて近い金額で落札したことから、「現に入札制度の公正が害されたことも明らかといえる」としました。
- 被告人が業者の代表者から依頼され逡巡の末に応じたこと、対価を得た又は得ようとしていたことが証拠上うかがえないことについては、幹部職員としての責任から「この点を大きく斟酌することは困難である」としました。
- 財産的損害については、「財産的損害の有無は本罪の趣旨と関係がなく、これに関する弁護人の主張も採用できない」としました。
- 他方、公訴事実を認めて反省の態度を示したこと、前科がないこと、懲戒処分等の不利益に直面していること、妻が今後の支援を約束したこと等を考慮し、「罰金刑の併科を避けた上、懲役刑の執行を一定期間猶予することが相当と判断した」としました。
実務上のポイント
- 対価を得た又は得ようとしていたことが証拠上うかがえず、財産的損害の有無は本罪の趣旨と関係がないとされたうえで、最低制限価格の教示が「いわゆる官製談合の中で悪質性が低い事案とはいえない」と評価された量刑例です。
- 参考として、現行の入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律8条は、職員が、その所属する国等が入札等により行う契約の締結に関し、その職務に反し、「予定価格その他の入札等に関する秘密を教示すること」等により当該入札等の公正を害すべき行為を行ったときの罰則(五年以下の拘禁刑又は二百五十万円以下の罰金)を、現行の刑法96条の6第1項は、偽計又は威力を用いて公の競売又は入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした者の罰則(三年以下の拘禁刑若しくは二百五十万円以下の罰金、又はその併科)を定めています。本判決の判決文には、適用法条を示す「法令の適用」の項は記載されていません。主文の刑名「懲役」は判決文の表記のままです。
- 自治体の入札事務や、入札に参加する事業者の内部統制(発注者職員との接触ルール等)を検討する際の参考になります。
出典
- 裁判所ウェブサイト 秋田地裁令和8年8月5日判決(令和8年(わ)第38号):https://www.courts.go.jp/hanrei/97214/detail4/index.html
- 同 判決文PDF:https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-97214.pdf
- e-Gov法令検索 刑法(明治四十年法律第四十五号)96条の6、入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律(平成十四年法律第百一号)8条

