【判例速報】東京地裁・共有フォルダのアクセス制限と営業秘密の秘密管理性(請求棄却)(2026年10月14日)

裁判所ウェブサイトの新着裁判例のうち、当サイトの過去の速報で未報告のもの1件を取り上げます(インターネット関連分野に直接該当するものは0件。ただし社内サーバーの共有フォルダで管理されていた電子データの営業秘密性が問題となった事案です)。

※裁判所サイトには掲載日(公開日)が表示されないため、裁判年月日ベースで直近の新着分を確認しています。

東京地裁 令和8年9月16日判決(共有フォルダのアクセス制限と営業秘密の秘密管理性)

  • 裁判所:東京地方裁判所民事第46部
  • 裁判年月日:令和8年9月16日
  • 事件番号:令和6年(ワ)第70159号 不正競争行為差止及び損害賠償請求事件

事案の概要

原告(綿半ソリューションズ株式会社)が、元従業員である被告A(令和4年5月31日退職)及び被告B(令和4年9月30日退職)に対し、原告の営業秘密である本件各情報(立体駐車場新築工事の予算金額・利益率・工事費用の内訳、地区別単価表、中期経営計画、郡山市への技術提案書)を取得し、開示し、又は使用したことが不正競争防止法2条1項4号の不正競争に当たると主張して、同法3条1項・2項に基づく使用等の差止め・廃棄と、同法4条に基づく損害賠償金合計3499万2386円(3300万円及び199万2386円)と遅延損害金の連帯支払を求めた事案です。

主文

「原告の請求をいずれも棄却する。」「訴訟費用は原告の負担とする。」

判断の要旨

  • 本件各文書のファイル名及び文中に「社外秘」「confidential」等の秘密であることを示す表示はありませんでした。
  • 本件共有フォルダには、営業秘密に該当しないことが明らかな一般情報及び公表情報のファイルが混在しており、保存されているファイルの個数は少なくとも数千個程度でした。
  • 裁判所は「仮に、アクセス権限を有する従業員が本件共有フォルダのアクセス制限の存在を認識していたとしても、これにより、本件各文書に記載された本件各情報が秘密として管理されていると容易に認識し得たとは認められない。」としました(アクセス制限を認識していても、それによって秘密として管理されていると容易に認識できたとはいえない、という意味です)。
  • 就業規則の「業務上の機密及び会社の不利益となる事項を他に漏らさないこと」との定めについても、「秘密として管理する情報を特定するための規定としては概括的かつ抽象的にすぎる」としました。
  • 結論として「本件各情報は不競法2条6項に定める「営業秘密」に当たらない」とし、「その余の点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がない」としました(有用性・非公知性、不正競争の有無、損害等は判断されていません)。

実務上のポイント

社内サーバーの共有フォルダにアクセス制限を設けていても、一般情報・公表情報と混在し、秘密表示もない場合には、秘密管理性が否定され得ることを示した事例です。電子データを営業秘密として保護するには、対象情報の特定・秘密表示・保存場所の区分が重要となります。

出典:裁判例詳細ページ/判決文PDF

出典

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。