【法改正速報】刑事法:国旗の損壊等の処罰に関する法律(国旗損壊罪)が施行(2026年8月13日)

対象期間:2026年8月12日〜8月13日/報告件数:1件(施行1件)

1. 国旗の損壊等の処罰に関する法律(令和8年法律第69号/通称「国旗損壊罪法」)

区分・年月日

施行:2026年(令和8年)8月13日

  • 成立:令和8年7月17日(議員立法)
  • 公布:令和8年7月24日(法律第69号)
  • 施行:附則により「公布の日から起算して20日を経過した日」=2026年8月13日

概要

公然と、人に著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法により、国旗国歌法に定める国旗を損壊し、除去し、又は汚損する行為を処罰する新法です。法定刑は2年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金(法第2条第1項。条文構成は警察庁通達の記載によります)。従前、刑法92条は外国国旗の損壊等のみを処罰対象としており、自国国旗については同様の規定がありませんでした(法務省Q&Aは「G7で唯一」と説明しています)。本法はこの空白を埋めるものです。

実務上のポイント

  • 警察庁通達に添付された法案提出者の資料(別添)は、本罪を「方法規制であって、表現やメッセージの内容に着目した内容規制ではない」と説明しています。また、同じく添付された附帯決議は、政治的意見表現や芸術表現など憲法上正当に保障される「国旗への表現やメッセージの記載」は「人に著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法」に該当しないとしています。他方、政治的・芸術的な目的があれば当然に構成要件から外れるわけではなく、構成要件に該当する場合には、行為の目的を含む諸事情を総合して、刑法35条による違法性阻却の有無を個別に判断するとされています(同別添)。
  • 同通達は、逮捕権の行使を「慎重適正に運用すべき」とし、違法性阻却事由の有無を含め組織的に検討することを求めています。また、同通達に添付された提出者資料は、「行為者の思想、世界観、主義主張やその行為によってなされた表現の内容を狙い撃ちにするような形で検挙するなどということのないように留意すること」を挙げています。刑事弁護においては、この通達の文言が弁解・意見書の足がかりとなり得ます。
  • インターネット関連での留意点:構成要件は「公然と」行う損壊等であり、条文上の対象は行為そのものです。警察庁通達に添付された法案提出者の資料(別添)は、自室で国旗を損壊する状況をライブ配信する場合を「基本的に構成要件に該当すると考えられる事例」とする一方、自室で損壊する状況を撮影して後で配信する場合を「公然性が行為の時に存在しない」例、生成AIで国旗が損壊される架空の動画を作成する場合を「有体物でない」例として挙げています。もっとも、これは提出者の考え方を示したものであり、個別の事案の判断については運用例・裁判例の集積を待つ必要があります。

未確認事項

e-Gov法令検索への本法の収録・反映は、本日時点では確認できませんでした(未確認)。条文の正確な引用が必要な場合は、官報(令和8年7月24日付)又はe-Gov収録後の本文をご確認ください。

参考:本期間中に確認されなかった事項

  • 第221回国会(特別会)は令和8年7月25日に会期を終了しており、対象期間中の法律の成立はありません。
  • 内閣法制局の公布法律一覧上、令和8年の公布法律は第78号(7月31日公布)が最新で、対象期間中の新たな法律の公布はありません。
  • 個人情報保護法等改正法(令和8年7月17日公布)は、施行日が「公布日から起算して2年以内で政令で定める日」とされており、施行日は未定です(対象期間中の新たな動きはありません)。
  • 総務省・デジタル庁・消費者庁の新着情報上、対象期間中にインターネット関連法(電気通信事業法・情報流通プラットフォーム対処法・著作権法等)の成立・公布・施行は確認されませんでした。

出典

【訂正(2026年10月7日)】本記事の次の記載を訂正しました。①警察庁通達が「方法規制…」と明示したとの記載を、通達に添付された法案提出者資料の説明であり、表現目的の行為も構成要件該当後に刑法35条の違法性阻却を個別に判断する旨に改めました(根拠:警察庁通達(令和8年7月24日)1・3・4・7・8頁)。②「行為者の思想…留意すること」の引用の出所を、通達本文から通達添付の提出者資料に改めました(根拠:同7頁)。③SNS配信等の扱いは公表資料で確認できないとした記載を、提出者資料がライブ配信・事後配信・生成AI動画の例を示している旨に改めました(根拠:同5・6頁)。④第221回国会の会期末を「7月17日」とした記載を「7月25日」に改めました(根拠:参議院・衆議院の会期表示)。

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。