【判例速報】東京高裁・受刑者死亡と国家賠償(医療過誤)/福岡高裁・酒気帯び運転の懲戒免職ほか計3件(2026年8月9日)

裁判所ウェブサイトの新着裁判例のうち、当サイトの過去の速報で未報告の3件を取り上げます(うちインターネット関連に直接該当するものは0件)。

【注記】裁判所サイトには掲載日(公開日)が表示されないため、「本日公開分」の厳密な特定はできません。裁判年月日ベースで直近の新着一覧(下級裁判所速報/新着統合/知的財産裁判例集)を確認し、既報分を除外しています。また、以下3件はいずれも裁判所サイトの「判示事項の要旨」「裁判要旨」欄が空欄であるため、要約は公式の判決文PDFに基づいています。

1. 東京高裁 令和8年6月26日判決/令和7(ネ)2493/国家賠償請求控訴事件

  • 事案の概要:徳島刑務所に収容中の受刑者が肝細胞がんの手術後、医療センターで死亡し、遺族が国に損害賠償を求めた事案。
  • 判断の要旨:医師には、午後9時40分の血圧低下時に術後出血を疑い検査を実施すべき義務があったと認定。検査を実施していれば出血を発見でき、再開腹手術により生存した高度の蓋然性があったとした。血圧低下の反復は術後出血の有力な兆候であり、頻脈がないことや排液が少量であることは出血の可能性を否定する根拠にならないとした。
  • 実務上のポイント:受刑者の医療をめぐる国家賠償事案。術後管理における注意義務の設定と、「高度の蓋然性」による因果関係認定の手法が参考になります。インターネット関連の争点はありません。
  • 出典裁判例詳細(裁判所ウェブサイト)判決文PDF

2. 福岡高裁 令和8年6月11日判決/令和8(行コ)7/懲戒免職処分等取消請求控訴事件

(原審:福岡地方裁判所 令和6(行ウ)26)

  • 事案の概要:福岡市消防局の職員が、呼気1リットル中0.2mgのアルコールを保有する状態で自動車を運転し、懲戒免職処分および退職手当約1965万円の全部不支給処分を受けたため、その取消しを求めた事案。
  • 判断の要旨:原判決(裁量権の濫用として処分を取り消した)を破棄。市が平成18年の海の中道大橋事故以降、飲酒運転撲滅に継続的に取り組み、酒気帯び運転職員を原則懲戒免職としてきたこと、職員が「アルコール分解に15時間以上を要する」旨の研修を受けており、前日の飲酒量が平素の倍以上であったことから酒気帯びの認識が推認されること等を挙げ、各処分は社会観念上著しく妥当を欠くとはいえず適法とした。
  • 実務上のポイント:公務員の懲戒免職・退職手当全部不支給に関する裁量審査。組織としての周知・研修の実績が処分の相当性判断で重視された事例です。
  • 出典裁判例詳細(裁判所ウェブサイト)判決文PDF

3. 佐賀地裁(刑事部) 令和8年7月9日判決/令和7(わ)159/詐欺8件・麻薬所持

(事件名は裁判所サイト上空欄)

  • 事案の概要:検察官や警察官に成りすまし、犯罪の嫌疑があると称して現金を預けるよう迫る特殊詐欺に組織的に関与し、「見張り役」として現金を監視・回収する役割を担って被害者4名から合計約5億円を詐取したほか、大麻成分を含む液体を所持したとされる事案。
  • 判断の要旨:有罪。懲役7年(未決勾留日数270日を算入)。多額の財産の奪取、卑劣な犯行態様、組織的犯行への関与といった重大な事情を指摘する一方、早期段階での供述協力、反省の態度、22歳という若年、身柄拘束期間を考慮し、求刑懲役10年から減軽した。
  • 実務上のポイント:なりすまし型特殊詐欺の「見張り役」に対する量刑事例。被害総額約5億円規模の事案における量刑水準の参考となります。なお、被害者への接触手段がインターネットを介したものか否かは判決文から確認できず、この点は未精査です。
  • 出典裁判例詳細(裁判所ウェブサイト)判決文PDF

インターネット関連分野について

本日確認した範囲では、発信者情報開示、プロバイダ責任制限法/情報流通プラットフォーム対処法、名誉毀損・プライバシー侵害、誹謗中傷、ネット上の著作権・肖像権侵害、個人情報保護、電子商取引に関する新着裁判例で未報告のものは見当たりませんでした。知的財産裁判例集の直近分(令和8年7月22日〜7月30日判決)は、いずれも既報です。

出典

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。