【判例速報】大阪高裁・メガソーラー林地開発許可の取消/再審無罪後の国家賠償ほか計6件(2026年8月11日)
裁判所ウェブサイトの新着裁判例のうち、当サイトの過去の「判例速報」で未報告の6件を取り上げます(うちインターネット関連分野に関わるもの1件)。
【注記1】裁判所ウェブサイトには掲載日(公開日)が表示されないため、「昨日〜本日公開分」の厳密な特定はできません。裁判年月日ベースで直近の新着一覧(下級裁判所(速報)/新着統合/知的財産裁判例集)を確認し、当サイトの過去の速報記事と照合して未報告のものを抽出しています。
【注記2】下記3〜6は裁判所サイトの「判示事項」「裁判要旨」欄が空欄です。要約は判決文PDFの記載に基づいています。
【注記3】知的財産裁判例集の直近分(令和8年7月22日〜7月30日判決)は、いずれも既報です。
1 大阪高裁 令和8年6月18日判決(令和7(行コ)44)/平群町メガソーラー林地開発許可処分取消請求控訴事件
- 裁判所・原審:大阪高等裁判所 第9民事部/原審 奈良地方裁判所 令和5(行ウ)20/結果:破棄自判
- 事案:大規模太陽光発電所の建設に関する森林法上の林地開発行為の変更申請に対する許可処分について、開発対象区域の下流域に居住する者らがその取消しを求めた事案の控訴審。
- 判断の要旨:請求をいずれも棄却した原判決を取り消し、処分行政庁の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとして、当該許可処分を取り消した(裁判所公表の裁判要旨による)。
- 実務上のポイント:森林法の林地開発許可について、下流域住民の原告適格を前提に裁量権の逸脱・濫用を認めて処分を取り消した高裁判断です。再生可能エネルギー施設の立地紛争・行政訴訟における先例価値が高い一件です。
- 出典:裁判例詳細ページ/判決文PDF
2 大阪高裁 令和8年6月25日判決(令和7(ネ)1674)/国家賠償請求控訴事件
- 裁判所・原審:大阪高等裁判所 第9民事部/原審 大津地方裁判所 令和2(ワ)670/結果:棄却
- 事案:病院内での看護助手の入院患者に対する殺人事件について有罪判決が確定して服役した後、再審により無罪判決を受けた控訴人が、警察官の違法な取調べ等を前提に、検察官による公訴提起や特別上告その他の行為が違法であったと主張し、国に対し国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を請求した事案。
- 判断の要旨:請求は認められないとされた(裁判所公表の裁判要旨による)。個別の違法性判断の理由は判決文PDFに拠る必要があり、本記事時点では未精査です。
- 実務上のポイント:再審無罪後の国家賠償請求における、検察官の公訴提起等の職務行為の違法性判断に関する高裁の実例です。刑事補償とは別に国賠を提起する場合の主張立証のハードルを検討する際の参考になります。
- 出典:裁判例詳細ページ/判決文PDF
3 仙台高裁 令和8年6月11日判決(令和8(う)25)/住居侵入、殺人、邸宅侵入、窃盗、電子計算機使用詐欺、詐欺被告事件〔インターネット関連〕
- 裁判所・原審:仙台高等裁判所 第1刑事部/原審 山形地方裁判所 令和6(わ)140/結果:控訴棄却
- 事案:窃盗2件のほか、不正に入手した他人名義のクレジットカードで、正当な使用権限がないのにスマートフォンのゲームアプリ購入代金4800円を支払う旨の虚偽の情報をGoogleのサーバに入力して支払を免れた電子計算機使用詐欺、他人名義カードによる飲食代金6000円の詐欺、および金品窃取目的で90歳の被害者宅に侵入して殺害した住居侵入・殺人の各事実。
- 判断の要旨:控訴棄却。自宅と誤認した旨の主張は土足での侵入・計画的な窓の破壊等から排斥、飲酒による責任能力・殺意の否認も犯行前後の通話や警察対応が的確であること、多数回の計画的暴行から排斥。当審未決勾留日数70日を原判決の刑(懲役17年)に算入。
- 実務上のポイント:不正取得クレジットカードによるアプリ内課金・デジタルコンテンツ購入が、対面の詐欺罪ではなく電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)として構成された事例です。プラットフォーム事業者のサーバへの虚偽情報入力という構成の実例として、電子商取引・決済まわりの刑事事件の参考になります。
- 出典:裁判例詳細ページ/判決文PDF
4 東京高裁 令和8年7月1日判決(令和6(う)1875)/殺人
- 裁判所:東京高等裁判所/結果:控訴棄却
- 事案:令和4年1月、自宅で妻に致死量のメタノールを摂取させて急性メタノール中毒により死亡させたとされる殺人事件の控訴審。原審は「不詳の方法により」摂取状況を作出したと認定し懲役16年を言い渡した。
- 判断の要旨:控訴棄却。専門家証言の関連性欠如、証拠開示手続違反、犯罪事実の特定不十分、誤飲・自殺の可能性といった各主張を排斥。メタノールを混入した食品パックの画像撮影とその後の画像削除、被害者の異常行動の放置等の複合的事実から、被告人が摂取させたのでなければ合理的に説明できないとした。当審未決勾留日数550日を原判決の刑に算入。
- 実務上のポイント:犯行方法が「不詳」でも訴因の特定に欠けるところはないとした点、およびスマートフォン内の画像とその削除履歴という電磁的記録が有罪認定の重要な間接事実として用いられた点が実務上参考になります。
- 出典:裁判例詳細ページ/判決文PDF
5 大津地裁 令和8年6月18日判決(令和6(わ)459)/詐欺被告事件
- 裁判所:大津地方裁判所/結果:有罪(懲役2年4月、未決勾留日数390日算入。求刑懲役4年)
- 事案:市議会議員かつ自治会理事であった被告人が、自治会長を欺いて、井戸の揚水量調査費用名目で55万円、寄付者への返礼品(水屋箪笥)の出捐額が約10万円であるのに350万円と装って350万円、上下水道工事・融雪ポンプ設置費用名目で500万円の合計905万円を騙し取ったとされる3件の詐欺。
- 判断の要旨:3件すべてについて詐欺罪の成立を認定。各工事が公共事業として実施され自治会の費用負担が不要であることを被告人が認識していたこと、事後に業者に作成日付を遡らせた領収証等を作成させたことを重視。被害者供述は通帳・手帳・払戻請求書等の客観的証拠に裏付けられ信用できるとした。反省がなく第1・第3事件の被害弁償もないとして実刑。
- 実務上のポイント:公職者の地位を利用した詐欺における欺罔行為と故意の認定、および事後の虚偽領収証作成という間接事実の評価が参考になります。会計管理が杜撰な団体における被害者供述の信用性判断の手法も実務上有用です。
- 出典:裁判例詳細ページ/判決文PDF
6 大阪地裁 令和8年6月22日判決(令和8(わ)941)/占有離脱物横領
- 裁判所:大阪地方裁判所 第13刑事部/結果:有罪(拘禁刑8月。求刑1年)
- 事案:警察署所属の警察官である被告人が、令和8年3月2日、変死事案の現場に臨場した際、故人が生前所有していた現金合計1011万円を発見し、これを自己のものとするため持ち去った事案。
- 判断の要旨:争点はなく有罪。通りすがりに物を持ち去るような誘惑的要素の高い類型とは質的に異なり、警察官が職務として遺体のある現場に立ち入り、一般人がアクセスできない場所で多額の現金を持ち去った点で非難の程度が相当高いとした。他方、翌日の自供、全額の被害回復、免職・退職金没収等の社会的制裁、反省、前科なしを斟酌し、実刑としつつ求刑より軽減。
- 実務上のポイント:改正刑法施行後の「拘禁刑」の宣告例です。公務員が職務上立ち入った場所での領得行為について、犯情評価が類型的に加重される旨を明示した点が量刑実務の参考になります。
- 出典:裁判例詳細ページ/判決文PDF
インターネット関連分野について
今回確認した範囲では、発信者情報開示、プロバイダ責任制限法/情報流通プラットフォーム対処法、名誉毀損・プライバシー侵害、誹謗中傷、ネット上の著作権・肖像権侵害、個人情報保護に関する未報告の新着裁判例はありませんでした。電子商取引・決済に関連するものとして上記3を掲載しています。
出典
- 裁判所ウェブサイト 下級裁判所(速報)新着一覧
- 裁判所ウェブサイト 新着統合一覧(最高裁判所判例集を含む)
- 裁判所ウェブサイト 知的財産裁判例集 新着一覧
- 上記各判例の詳細ページおよび判決文PDF(各項目にリンクを記載)

