民法改正講義案8(代理1)

 1 代理権の濫用事例に条文ができた

【第百七条】
代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。

(1)ひとこと解説

代理権の濫用事例にも条文が定められました。代理権を濫用した場合、無権代理と同じ効果となる場合があります。

(2)詳細解説

代理権濫用かつ相手方が濫用について悪意・善意有過失の効果は、無権代理(本人に効果不帰属)となりました。
つまり、代理権を濫用したものに対し、無権代理人としての責任追及ができたり、本人に催告することができたりするようになったのです。
旧法では、93条類推で、無効とされていました。無効なので、本人に催告などはできなかったのです。

(3)例

Aは、Xの代理人として、Yに対し、1億円で甲土地を売却することになった。
実は、Aは売買代金1億円を着服するつもりだった。Yは、Aが着服するつもりであることを薄々感づいていたが、そのまま1億円を渡した。
この場合、原則として、Xに売買契約の効果は及ばないので、Xは甲土地をYに渡す必要はありません。Yは、Aに対し責任追及(代金返還請求など)をすることができます。もちろん、理論上、Yは、Xに対し、売買契約の履行を催告することもできます。しかし、応じることはまずないでしょうね。

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。