【判例速報】大阪地裁・Amazon出品と著作権侵害/元従業員による営業秘密持出しの幇助ほか計4件(2026年9月2日)
裁判所ウェブサイトの新着裁判例のうち、当サイトの過去の速報で未報告のものは4件です(うちインターネット関連分野に関わるものは2件)。
【注記】裁判所ウェブサイトには掲載日(公開日)が表示されないため、「昨日から本日に公開された分」を厳密に特定することはできません。そのため、裁判年月日ベースで直近の新着一覧(下級裁判所(速報)・新着統合・知的財産裁判例集の3本)を確認し、当サイトの既報分との重複を個別に除外しています。
1.大阪地方裁判所 令和8年7月30日判決(令和7(ワ)3737・著作権侵害差止等請求事件/権利種別:著作権)
事案の概要
テキスタイルデザイン4件(「鹿」「ねこ」「菊日和」「根菜」)の著作権を譲り受けた原告(紳士服・婦人服等の輸入販売業者)が、被告(服飾・雑貨等の企画製造販売業者)が中国企業から足袋型ソックスを輸入し、Amazon内のストアで販売した行為が著作権侵害に当たるとして、差止め・廃棄と損害賠償を求めた事案です。
判断の要旨
一部認容(125,050円)。被告商品は本件各著作物と表現の本質的な特徴において一致すると認定されました。本件各著作物が令和2年時点で公開されており、被告の輸入時(令和5年10月)には既に公開されていたことから依拠性が認められています。
- 輸入行為は、著作権法113条1項1号により翻案権侵害とみなされる
- 販売行為は譲渡権侵害、Amazonストアへの商品画像の掲載は公衆送信権侵害に当たる
- 過失については、衣料品の輸入販売業者には著作権侵害に注意を払う義務があり、インターネットの画像検索で容易に本件各著作物を確認できたとして肯定
- 損害額は著作権法114条2項により、限界利益(1足167円×150足=25,050円)に弁護士費用10万円を加算
- 同条3項に基づく最低使用料300万円の主張は、短期間かつ限定的な侵害行為には適用すべきでないとして排斥
- 製造の差止めは、製造の事実を認める証拠がないとして認められず
実務上のポイント
EC出品による著作権侵害について、①輸入行為=みなし侵害(113条1項1号)、②出品画像の掲載=公衆送信権侵害、という構成が明示された点が実務的に重要です。また、輸入販売業者の調査義務の水準として「インターネットの画像検索で容易に確認できた」ことが過失認定の根拠とされており、EC事業者の仕入れ時デューデリジェンスの目安となります。
他方、114条3項の最低使用料条項を根拠とする高額請求は、侵害の期間・規模が限定的な場合には通らないことも示されました。
2.大阪地方裁判所 令和8年7月28日判決(令和6(ワ)6912・損害賠償請求事件/権利種別:不正競争)
事案の概要
マンション入口のロッカーを利用したクリーニング取次サービス(「ランドリーパック」「ランドリーオン」)を提供する原告会社が、元従業員である被告に対し、被告がサーバーのアカウント情報を書き換えて営業秘密(ソースコード・設定ファイル・顧客データ等)を不正に取得したなどと主張して損害賠償を求めた事案です。本件情報はクラウドサーバー上に保管され、被告がアカウント管理に関与していました。
判断の要旨
一部認容(141万円)。本件情報(プログラム・設定ファイル・顧客情報)は有用性・秘密管理性・非公知性を備え、不正競争防止法上の営業秘密に該当すると認定されました。被告自身は情報開示行為の主体ではないものの、元経営者による情報開示および他社2社による使用行為を補助・容易にしたとして、故意による幇助に基づく不法行為責任を負うとされています。
損害額については、使用者側2社の売上等に関する証拠がなく不競法5条2項による推定は困難であるとして、従前の利用料実績(月額1万円のアプリ利用料と売上連動分)を踏まえ、月額3万円×47か月=141万円と認定されました。原告主張の約1711万円は認められていません。
実務上のポイント
- クラウド上のソースコード・顧客データの持出し事案で、アカウント管理権限を持つ元従業員の関与を「幇助」構成で捉えた点
- 不競法5条2項の推定が、使用者側の売上立証を欠くと機能せず、従前の利用料実績を基礎とする比較的低額の認定にとどまった点
SaaS・アプリ事業者の営業秘密侵害訴訟では、侵害品側の売上に関する証拠収集(文書提出命令等)の要否を早期に検討する必要があります。
3.札幌地方裁判所小樽支部 令和8年7月29日判決(令和8(わ)10・危険運転致死被告事件)
事案の概要
被告人が、前夜から複数店舗で多量に飲酒していながら運転可能と安易に判断して自動車を発進させ、小樽市内の緩やかに湾曲する道路において、アルコールの影響下で仮睡状態に陥り、時速約80~88キロメートルで対向車線に進出して対向車と衝突し、24歳の運転者を重症多発外傷により死亡させた事案です。
判断の要旨
懲役4年6月(求刑・懲役5年6月)。改正前の自動車運転死傷行為処罰法3条1項に該当すると認定されました。量刑は、飲酒運転の危険性が高度に現実化した事案であり結果が極めて重大であるとする一方、反省態度、損害賠償の見込み、前科がないこと、被害者側にも法定速度超過があったことを、被告人に有利な事情として斟酌しています。
実務上のポイント
アルコールの影響下での仮睡状態による対向車線進出について、危険運転致死罪の成立を認めた事例です。被害者側の速度超過が量刑上の有利事情として明示的に考慮されている点は、交通事故の刑事・民事双方の弁護活動で参照価値があります。
4.広島高等裁判所第1部 令和8年7月23日判決(令和8(う)32・住居侵入、強盗殺人未遂、現住建造物等放火、窃盗/控訴棄却)
事案の概要
被告人が、被害者(84歳)方から現金約800万円を窃取した3日後、被害者に睡眠薬入りの酒を飲ませて昏酔させ、寝室押入れから現金約1800万円を盗取し、その後、被害者が死亡する危険性が高いことを認識しながらライターで放火して約15.67平方メートルを焼損させたものの、被害者が目覚めて逃げ出したため死亡に至らなかったという事案です。控訴趣意は、昏酔強盗の不成立、放火行為の殺人未遂該当性の否定、強盗殺人未遂罪の不成立、および懲役18年の量刑不当でした。
原審は広島地方裁判所(令和6(わ)813)。
判断の要旨
控訴棄却(当審における未決勾留日数中70日を原判決の刑に算入)。事実誤認の主張については、被害者供述から昏酔状態に陥ったことは明白であり、薬物混入行為には昏酔状態を招く現実的危険性があり、被告人は昏酔状態を認識して盗取に及んだと認定されました。放火行為は被害者死亡の危険性が高いことが明らかで、殺意が認められるとされています。
量刑不当の主張については、被害者の死傷という結果がない点を除き犯情は極めて悪質であり、財産被害5700万円は高額、動機は短絡的かつ身勝手であるとして、酌むべき事情を考慮しても原判決の懲役18年は相当とされました。
実務上のポイント
睡眠薬を用いた昏酔強盗における「昏酔させる行為の現実的危険性」の評価と、放火による殺意認定の判断枠組みが示された控訴審判断です。
精査状況について
- 上記4件はいずれも裁判例詳細ページの「判示事項の要旨」「裁判要旨」「参照法条」欄が空欄であり、本記事の要旨は判決文PDFの記載に拠っています。原典(courts.go.jp掲載のPDF)は確認済みです。
- 下級裁判所(速報)一覧は先頭30件のみが静的に取得可能であり、31件目以降は本日の確認範囲に含まれていません。
出典
本記事は、裁判所ウェブサイト(courts.go.jp)掲載の以下の公式ページに基づいています。

