動画制作者に伝えたい著作権の話5~著作権法はクリアしても~
さて、前回の続きです。「たまたま著作物が映り込んだといえるならセーフになることが多い」としたら、テーマパークの紹介動画はどうなんだろうか?という話でした。テーマパークを撮影したいのだから、「たまたま」とは言えないのではないかということでしたね。
散々もったいぶりましたが、実は、条文があります。
(公開の美術の著作物等の利用)
第四十六条 美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
一 彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合
二 建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
三 前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
四 専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合
要するに、建物や屋外にある美術品を撮ったとしても、その動画を売らない限りは、著作権法違反にはならないという意味です。
もちろん、同じような建物を造ったり、同じような美術品を作っても著作権法違反となります。しかし、動画制作者の中で、そこまでする方は、ほぼ居ないと思います。
したがって、動画作成者の感覚としては、撮った動画を売らない限り、著作権法はクリアすることになります。
さて、上記において、「著作権法違反には」とか「著作権法は」の部分に、下線が引かれていたのにお気づきでしょうか。
そうです。ここまでは、あくまで著作権法の話しかしておりません。
しかし、テーマパークの運営会社は、原則として、誰を入園させるか、入園者に対してどのような義務を求めるかを、規約で自由に定めることができます。
たとえば、20歳以上の人が飲酒をすることは法律違反ではありません。しかし、テーマパークの運営会社が「飲酒をしている方は入園をお断りします。」と定めることは自由です。
つまり、テーマパークの紹介動画を撮影したり、YouTubeにアップロードする場合には、著作権法のみならず、テーマパークの規約にも気を配る必要があります。
たとえば、東京ディズニーリゾート(以下「TDL」と略させていただきます。)さんのウェブサイトによると、「他のお客様等のご迷惑となる撮影および公衆送信は固くお断りします。」とあります。「公衆送信」とは、文字どおり公衆に対して送信することであり、ウェブサイト(ホームページ)や、YouTube等にアップロードすることを指します。
これが、「『他のお客様等のご迷惑となる撮影』と、『公衆送信』は固くお断りします。」と読むのか、「『他のお客様等のご迷惑となる撮影』と、『他のお客様等のご迷惑となる公衆送信』は固くお断りします。」と読むのかは、判然としません。
個人的には、撮影せずに公衆送信は出来ないので、前者だと思います(撮影は他のお客様に迷惑が掛からない限りOK、公衆送信は迷惑の有無に拘らずNGという解釈です。)。しかし、後者と読む余地があることは否定しません。
いずれにしても、TDLさんの紹介動画をアップロードする時には、慎重になる必要があります。最悪の場合、TDLさんから「あなたは規約違反をしたので、出禁にします。」と言われるリスクがあるからです。
このように、たとえ著作権法をクリアしたとしても、規約に違反すれば、思わぬリスクが降りかかってくることがあります。
ご注意くださいませ。