著作権に関するQ&A3~適法な引用をしていますか?~

Q 他者が作った画像を引用して、動画を作ろうと思います。引用元を明記すれば、適法になるんですよね?

A そうとは限りません。引用には色々条件があります。引用元の明記は条件の一つでしかありません。

【解説】

確かに、著作権法では、引用を認めています。

(引用)
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

ただ、何をもって、「公正な慣行」というのか、「正当な範囲内」というのかは、この条文だけでは全く分かりません。
しかも、引用に関しては、施行令とか、施行規則みたいなものは無いようです。

そうなると、裁判例を見るしかないです。しかし、裁判例でも、解釈ががっちり固まっているわけではないと思われます。

一番厳しいと思われる条件を示したのは、東京地判平成19年4月12日判決です。

健全な社会通念に従って相当と判断されるべき態様のものでなければならず,かつ,報道,批評,研究その他の目的で,引用すべき必要性ないし必然性があり,自己の著作物の中に,他人の著作物の原則として一部を採録するか,絵画,写真等の場合には鑑賞の対象となり得ない程度に縮小してこれを表示すべきものであって,引用する著作物の表現上,引用する側の著作物と引用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができるとともに,両著作物間に,引用する側の著作物が「主」であり,引用される側の著作物が「従」である関係が存する場合をいうものと解すべきである。

「引用する側の著作物と引用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができる」の中に、引用元の明示が含まれています。引用元を明示しないと、「明瞭に区別」ができないからです。

上記の判決をご覧になってお分かりのとおり、引用元の明示だけでは、とても引用として認められないということになります。

また、「裁判例でも、解釈ががっちり固まっているわけではない」とは申し上げましたが、やはり、「引用する側の著作物が『主』であり,引用される側の著作物が『従』」という点については、多数の裁判例が指摘しているところです。

つまり、たとえば、私が、ポルノグラフィティさんの「俺たちのセレブレーション」の歌詞の一部である「バナナみたいな銃」を引用し、「この歌の歌詞は、いたるところに、かつてのポルノグラフィティさんの曲の歌詞を暗示させるものがちりばめられています。しかし、この『バナナみたいな銃』が何を意味するのかは、私には分かりませんでした。」と論評するのであれば、引用される側の歌詞が従で、引用する側の私の論評が主となり、適法な引用と言えるでしょう。

しかし、俺たちのセレブレーションの歌詞を全部引用し、「この歌の歌詞は、いたるところに、かつてのポルノグラフィティさんの曲の歌詞を暗示させるものがちりばめられています。深いですね。」と論評しても、引用される歌詞が主となるでしょうから、違法な引用となるでしょう。

ということで、引用元を明示しただけでは、適法な引用になるとは限らないというお話でした。