弊所FAQ1~「異議あり!」とは言ったことがない~
これから不定期に、私が良くいただく質問に対しお答えしていきます。
なお、あくまで私個人の意見・見解であり、弁護士会としての意見・見解ではありませんので、ご了承ください。
Q ドラマやゲームでは、弁護士が「異議あり!」と叫ぶシーンをよく見ます。実際に、「異議あり!」と言ったことはありますか?
A 「異議あり!」と言ったことはありません。ただ、「異議があります。」「異議を申し立てます。」ということは、時々あります。
【解説】
ドラマやゲームでは、弁護士が「異議あり!」と叫び、裁判の流れを一気に変えるシーンなどが見られます。弁護士の私から見ても溜飲の下がるシーンです。特に、ゲーム「逆転裁判」では、正しいところで異議を出すと、BGMも変わり、テンションがあがります。
ただ、少なくとも、私は、実際の裁判で「異議あり!」とは叫んだことがありません。あくまで穏やかに「異議があります。」「異議を申し立てます。」というようにしています。これは、好みの問題だと思います。「異議あり!」が間違っているという訳ではありません。
なお、他の弁護士や、検察官を見ても「異議があります。」とおっしゃる方の方が多いような気がします。
ちなみに、児童・生徒・学生さん向けの模擬裁判のシナリオを作る際には、敢えて「異議あり!」というセリフを入れることはあります。これは、少しでも楽しんでもらいたいからです。やはり、「異議あり!」の方が気持ちは盛り上がりますよね。
ところで、ゲーム「逆転裁判」では、証人が嘘をついているときに、異議を出すのが正解という扱いになっています。
しかし、現実の裁判では、違法な証人尋問をした場合に異議を出すのが正解なのです。たとえば、原則として同じ質問を繰り返すことは違法とされています。それにも拘らず、質問を繰り返した場合に「異議があります。」と言えるわけです。つまり、異議は証人に対してぶつけるものではなく、尋問をしている相手方の弁護士や検察官にぶつけるものなのです。
ちなみに、証人が嘘をついていると思った場合には、嘘をついていることが分かる証拠を出せばよいのです。「異議があります」とは言えませんし、いう必要もありません。たとえば、交通事故発生時の信号の色が問題となっていて、本当は信号が赤だったにも拘らず、証人が「信号は青でした。」と言ったとしましょう。
この時には、「異議があります」とはいえません。別途、信号が赤であることの証拠(たとえば、ドライブレコーダーの映像)などを別途提出すればよいのです。
ということで、異議のお話でした。