特定技能にも触れます3

さて、受入機関として適法性があるとしても、さらに注意しなければならない点があります。

それは、受入機関と、特定技能外国人の方との契約が適法であるということです。
当たり前ではないかとお考えでしょう。しかし、念のため、見逃しやすいを申し上げます。

1つ目は、報酬が、日本人と同等以上であるということです。

特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令
第1条

1 出入国管理及び難民認定法(以下「法」という。)第二条の五第一項の法務省令で定める基準のうち雇用関係に関する事項に係るものは、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)その他の労働に関する法令の規定に適合していることのほか、次のとおりとする。
三 外国人に対する報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること。

「日本人と同じ報酬を支払う準備はあるのに、日本人が雇えない」という企業のために特定技能制度はあります。したがって、特定技能外国人の方には、日本人と同等のお給料を支払う必要があるのです。

しかも、特定技能外国人受入れに関する運用要領によりますと、その給料は、 「特定技能外国人の報酬の額が同等の業務に従事する日本人労働者の報酬の額と同等以上」であることが求められます。
たとえば、X社が、特定技能外国人Aを2020年に受け入れて、入社3年目の日本人Bと同等の業務に従事させたとします。
この場合、Aの2020年の給料は、新卒の給料や中途採用1年目の給料では不可です。入社3年目のBと同等の給料にしなければならないのです。

ここは、何となく腑に落ちないかも知れません。また、社長さんが納得しても、Bが納得しないかも知れません。しかし、法令で決まっている以上、どうしようもありません。

2つ目に、外国人の帰国費用を負担するということです。

特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令
第1条
2 法第二条の五第一項の法務省令で定める基準のうち外国人の適正な在留に資するために必要な事項に係るものは、次のとおりとする。
一 外国人が特定技能雇用契約の終了後の帰国に要する旅費を負担することができないときは、当該特定技能雇用契約の相手方である特定技能所属機関が、当該旅費を負担するとともに、当該特定技能雇用契約の終了後の出国が円滑になされるよう必要な措置を講ずることとしていること。

簡単にいえば、特定技能に関する契約が円満に終了した時に、その外国人が帰国費用を持っていなければ、受入企業が、帰国の手配(航空券の手配等)をしなければならないという意味です。
契約が円満に終了した以上、受入企業には何の責任も無いような気がしてしまいますが、それでは不可という意味です。
帰国までは面倒を看なければならないというのが、法令の趣旨です。

以上の2つは、見逃しやすいポイントなので、ご説明しました。あとは、労働法を守っていれば、法令違反になりにくいでしょう。しかし、あくまで「なりにくい」であって、このほかにも、細かい点に関する法令は色々あります。以上2つだけ守っていれば、絶対に適法になるという意味ではありません。
特定技能外国人を受け入れる場合には、ぜひ、弁護士に御相談ください。