民法改正講義案4(売買6)-代償請求権はどうなった?-
6 代償請求権も明文化された
【第422条の2】
債務者が、その債務の履行が不能となったのと同一の原因により債務の目的物の代償である権利又は利益を取得したときは、債権者は、その受けた損害の額の限度において、債務者に対し、その権利の移転又はその利益の償還を請求することができる。
(1)ひとこと解説
債務者に帰責事由(落ち度)があって履行不能になったとしても、保険金は下りることがあります。その場合、債権者は、保険金を自分に引き渡すよう、債務者に請求できるのです。
(2)詳細解説
当たり前ではないかと思うかも知れません。しかし、保険契約は、あくまで、債務者と保険会社が結ぶものです。したがって、仮に、保険金が下りたとしても、原則として、債権者には「保険金をよこせ」と請求する権利がありません。そこで、民法422条の2を創設して、「保険金をよこせ」と請求する権利を認めたのです。
(3)例
「売主は、静岡市において、東京の一戸建てを、買主に対し、1億円で売買する契約をした。売主は、買主が、直ちに1億5000万円で転売することを知っていた。しかし、契約締結1時間前、その一戸建ては売主の失火により全焼していた。」という事例で考えましょう。
この事例において、売主に3億円の火災保険金が下りてきた場合、買主は、売主に対し、保険金のうち1億5000万円の支払を請求できる場合があるのです。