静岡市清水区の弁護士の浅井裕貴です。
弊事務所では、労働者様側・企業者様側いずれの労働問題も扱います。
ここでは、労働問題についてご説明申し上げます。
まず労働問題で抑えておきたい1点とは
労働問題で抑えておいていただきたいのは、
「働いた分の給料が出るのが原則である。」です。
当たり前といえば当たり前なのですが、この「当たり前」が、なかなか守られません。
以下、詳しくお話します。
働いた分の給料が出るのが原則である
給料は、全額、通貨で支払わなければなりません(労基法24条1項)。
Ⅰ 給料の天引きには制限あり
また、労働者が債務不履行・不法行為をしたからといって、その損害賠償金と給料を相殺することは許されません(最高裁判決昭和31年11月2日、昭和36年5月31日)
つまり、遅刻をした場合(=債務不履行)、遅刻分以上の額を天引きすることはできません(もちろん、遅刻分の給料が支払われないのは当然可能です。)。
たとえば、時給1200円のバイトの方が5分遅刻した場合、遅刻した5分間の100円が支払われないのは当然です。
しかし、100円を超えて減額することはできないのです。
したがって、例えば「遅刻をしたら、遅刻時間に拘わらず1時間分を減額する。」という決まりは無効です。
あるいは、バイトの学生さんがお皿を割ったからといって(=不法行為)、給料から天引きすることはできません。
もちろん、天引きが禁止されているだけで、弁償する義務自体は残ります。
つまり、給料は一旦全額支払い、その後(前でも差し支えないですが)、お皿の弁償についてゆっくり話し合うことになります。
したがって、「お皿を割ったら、皿の値段に拘わらず、1枚につき1000円天引き」という決まりは無効です。
Ⅱ 裁量労働制には何らかの届出が必要
確かに、裁量労働制が適用されると、残業代の請求は難しくなります。
しかし、かなり大雑把にいえば、裁量労働制を導入するには、
最低限、裁量労働制を定めた書面を、労基署等に届出る必要があります。
少なくとも、契約書に「裁量労働制」と書いてあれば、直ちに裁量労働制が適用されるわけではありません。
「裁量労働制だから残業代が支払われない」といわれた場合、どのような書類が、どのような官庁に届け出られているか、確認してください。
Ⅲ 固定残業代制度でも超えた分は請求できる
やはり当たり前なのですが、固定残業代制度であっても、固定分を超えた場合には、超えた分につき、残業代を請求できます(大阪地決平12年6月30日)。
なお、固定残業代とその他の分が区別できない場合、「固定残業代が基本給の中に含まれている」という主張も通りにくくなります。
Ⅳ 管理監督者のハードルは高い
確かに、管理監督者になると、残業代は支払われません。
しかし、「管理監督者」という名前がつけばよいというものではありません。
また、単に、「課長」に昇進したから、自動的に「管理監督者」になる訳でもありません。
実質的にみて、残業代を支払わなくても良いほど地位の高い方でなければならないのです。
お時間がある方は、厚労省が作ったパンフ(PDF)をご覧ください。
このパンフを大雑把に説明すると、
①経営者と一体といえるような、権限・裁量・職務内容が与えられていること
②執務時間が自由であること
③待遇も一般労働者より高いこと
を満たす場合に、「管理監督者」にあたりやすいとされています。
少なくとも、執務時間が自由でない場合には、管理監督者にあたらない可能性が高いでしょう。
疑問が出てきたら弁護士にご相談ください
いかがでしょうか。「残業代が支払われない場合は意外と少ない」と
いう印象を持ってくださったのではないでしょうか。
くどいようですが、働いた分の給料が出るのが原則なのです。
ただ、ご自身で請求するのはためらわれるとか、気が引ける、そもそも時間がないということもあるでしょう。
そのような場合、弁護士にご相談ください。
あなたに代わって、会社と交渉することができます。
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