交通事故案件の肝8~こんな後遺障害診断書には要注意!~
このテーマでブログを更新するのは久しぶりです。
交通事故に遭われると、病院または診療所で治療を受けることになります。
そして、いつかは治療が終了します。完治すれば最良ですが、どうしても、痛みやこわばりなどの症状が残ってしまうことも多いです。
症状が残ってしまった場合には、後遺障害診断書を取得し、自賠責の機関に申請することになります。ここまでは、いろんな弁護士が、いろんな方法で発信していますので、このページにたどり着いた方も、承知してくださっていると思います。
つまり、「後遺障害診断書が大事である。」ということは、浸透しつつあると思います。
そして、後遺障害診断書は、お医者様が、医療的な専門知識をもって作成されるのですから、理論上、弁護士が口を出そうと出すまいと、後遺障害診断書の内容は変わらないはずです。
ただ、ここ2,3年、ご再考をお願いしたくなる後遺障害診断書を拝見する機会が出てきました。
たとえば、以下のような内容の後遺障害診断書です。以下のような内容の後遺障害診断書を受け取った場合には、弁護士に相談のうえ、後遺障害診断書の修正ないし書き直しをお願いした方が良いと思います。
なお、イメージを持ちやすくするために、お読みいただく前に後遺障害診断書の画像をご覧いただけますと幸いです。
【①依頼者様が症状を訴えている箇所の一部しか記載がない】
たとえば、依頼者様が、肩関節と股関節の症状を訴えているとします。その場合、通常であれば、肩関節と股関節に関して、後遺障害診断書には記載をしていただけます。
しかし、理由は良く分かりませんが、肩関節だけしか記載がないという後遺障害診断書を拝見したことがあります。やはり、症状を訴えている以上、全ての箇所について記載をしていただきたいところです。
お医者様の目からは後遺障害が無いように見えても、交通故事故の訴訟では、後遺障害が認められるという可能性も絶無ではないのです。
【②症状がある側しか検査していない】
たとえば、依頼者様が、左肩関節の症状を訴えているとします。その場合、通常であれば、左肩関節の可動域(どれくらい動くか)を検査し、比較対象として症状のない右肩関節の可動域も検査します。
これは、交通事故によってどれくらい動きが悪くなったかを見るのに必要だからです。
たとえば、交通事故前から五十肩を患っている人と、患っていなかった人を想像してください。
交通事故前から五十肩を患っていなかった人が、交通事故で左肩を痛めたとしましょう。
気を付けの姿勢を0度・バンザイの姿勢を180度とした場合に、交通事故のために、左肩が120度までしか上がらないようになったとします。
しかし、右肩は痛めていない以上、180度まで上がるはずです。
この場合、交通事故のために、3分の1くらい動きが悪くなったといえます。
3分の1くらい動きが悪くなったとすれば、後遺障害認定が受けられる可能性が出てきます。
しかし、交通事故の前から五十肩を患っていた人ならばどうでしょうか。
左肩も、右肩も、120度くらいしか上がらないでしょう。
この場合、交通事故の前後で、動きが悪くなったとはいえません。
そうなると、後遺障害認定が受けづらいということになります。
このように、症状がある側の数値だけでは、どれくらい動きが悪くなったのか分かりません。
そのため、症状がない側の数値の記載は必須なのです。
【③可動域検査において「自動」の欄しか記載がない】
可動域の検査においては、自分で動かすことを「自動」と呼び、機械・器具・第三者の手など、自分以外が動かした場合を「他動」と呼びます。
そして、皆様も直感的にお分かりのとおり、「他動」数値の方が信用性が高いです。そのため、「他動」が測定できる場合には、必ず「他動」を測定していただきます。
つまり、ケガが重すぎて「他動」が測定できないとか、「他動」を測定しようとすると却ってケガをする危険性が生じるなどの事情が無い限り、「他動」を測定するのです。
しかし、そのような特段の事情もなく、「他動」を測定していない後遺障害診断書を拝見したことがあります。これでは、せっかく作ってくださった後遺障害診断書の価値が下がってしまいます。
「他動」の記載が原則なのです。
以上の3つのうちのどれかに当てはまる後遺障害診断書を受け取ってしまった場合には、お医者様に相談するとか、弁護士に相談するなど、対策をお考えになることを強くお勧めします。
そのまま使うのだけは、お勧めできません。