ハンコについて本気出して考えてみた12~「無い」ことが重大な意味を持つことも~
前回は、わずかな単語があるか無いかで意味が変わる例を申し上げました。
今回は、そもそも「無い」ことが重大な意味を持つ例を申し上げます。
不躾ですが、ちょっと想像してみてください。皆様(Xさん)が何らかの理由でお金に困りました。
そんな折、Cさんが「お困りのようですね。お金を貸してあげます。返済日は決めなくてもいいですよ。『私ことXは、Cさんから100万円をお借りしました。間違いなくお返しします。X』という借用書にハンコを捺すだけです。返済日が定められていませんね?」といってきました。
みなさんなら、どうなさいますか?返済日の記載が「無い」と、皆様(Xさん)が返せるときに返せばよいという気になってしまうかも知れません。
もし、返済日の記載が「無い」借用書があったら、絶対にハンコを捺してはいけません。
返済日を定めていない場合、Cさんが、いつでも返済の請求ができるようになるからです。
民法412条
3 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
つまり、あなたが資金繰りがついてホッとした瞬間に返済の請求を受けたとしても文句は言えないという意味です。
返済日を定めないというのはそれほど恐ろしいことなのです。
このように、あるはずのものが「無い」場合に、効力が生じることもあります。
やはり、電話での契約書確認は難しいのです。
ちなみに、本当に、返済はいつでもよいという条項にするにはどうしたら良いでしょうか。
正直申し上げますと、Cから、皆様へ100万円の贈与をして、皆様が返せそうになったら、Cに100万円の贈与をすれば良いと思います。
もし、どうしても貸金の形を採りたいという場合には、返済日を1年後などにして、1年後に、返済日をさらに1年後に更新するなどの方法も考えられるでしょう(ただし、私は税務に関しては素人です。この方法で、税務上、貸金契約と認められるかは保証できません。)。
ということで、あるはずのものが「無い」という場合に、重大な意味を持つことがあるというお話でした。