半壊以上なら解体も選択肢に
前回、「まずは罹災(りさい)証明書の取得から」と申し上げました。
罹災証明書が送られてくると、応急修理制度の案内も一緒に同封されていることが多いようです。
準半壊の方は、確かに、すぐに受けられる支援としては、応急修理制度くらいしかありません。
もちろん、半壊以上の方も、応急修理制度を使えますし、金額も約65万円と少なくありません。
しかし、半壊以上の方におかれましては、解体も選択肢に入れたうえで検討なさることをお勧めします。
それは、被災者生活再建支援制度(基礎支援金・加算支援金)の適用の可能性があるからです。
今回も、支援内容のまとめをご覧ください(弁護士永野海先生のウェブサイトから。)。
真ん中あたりの、「もらえるお金」の黄色のセルに「被災者生活再建支援金」とあるのをご覧いただけるかと存じます。
そして、黄色のセルの列を縦に見ていただくと、大規模半壊以上だと、基礎支援金として50万円か100万円、加算支援金として50万円~200万円が貰える可能性があることが示されています。
一見すると、単なる半壊では、被災者生活再建支援金の対象にならないようにも思います。
しかし、一番左の列の「半壊など+建物解体」を探してください。そして、そこから行を右に見ていってください。
すると、基礎支援金として100万円、加算支援金として50万円~200万円貰える可能性があることが示されています。
要するに、半壊以上の場合で、建物解体をすると、全壊と同じように最大300万円が貰える場合があるという意味です。
では、どのような場合でしょうか。静岡市のウェブサイトを読むと、「住宅が半壊、または住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯(解体)」が対象になるとされています。つまり、単に解体しただけでは不可で、「やむを得ず解体」といえる場合に、はじめて全壊扱いとなるというわけです(なお、「やむを得ず解体」に当たるとしても、解体費用は自費が原則です。公費解体の対象になる方は、ごく僅かです。公費解体は期待しないでください。)。
では、どのような場合が「やむを得ず解体」といえるのでしょうか。残念ながら、明文化された事例集などは見つかりませんでした。
つまり、基本的には、市役所の担当課である地域総務課に確認していただくのが一番確実です。
そうはいっても、ある程度の見込みを知りたいという方もいらっしゃると思います。
そこで、別の市作成の被災者生活再建支援法Q&AのQ8によると、「必要な補修費等が著しく高額となること」のほかに、「豪雨により住家に流入した土砂の撤去のためや、耐え難い悪臭などのため」は「やむを得ず解体」に該当するとのことです。
ここでいう「補修費等が著しく高額」というのも、「○○万円なら『やむを得ず解体』にあたる。」という明確な基準はないようです。しかし、私が聞いている話からすると、必ずしも修理費が1000万円を超える必要はなく、修理費数百万円であっても、「やむを得ず解体」にあたる可能性があるとのことです。
また、「耐え難い悪臭」というのは、かなり抽象的です。抽象的ということは、広く解釈される可能性もあるという意味です。
なお、「再建支援金」という名称から、仮に「建設・購入」で加算支援金として200万円を貰おうする以上、現在の自宅(解体を考えている住宅)の敷地に建設しなければならないのではないかと思われるかも知れません。
しかし、そんな決まりはありません。全く別の場所に建設したり、全く別の場所の家を買うことも可能です。したがって、被災者生活再建支援制度を使って現在の自宅を、解体し更地にして売却し、別の場所に住宅を購入することも可能です。
ここまで申し上げると、解体も選択肢に入る方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのため、半壊以上の罹災証明書を取得された方で、少しでも解体を考えている方は、修理の見積書を取得し(修理費用が「著しく高額」か否かを見てもらうためです。)、そのほか、現在の自宅に住み続けることが困難な理由をできる限り考えて(どんな理由が「やむを得ず解体」となるか分からないので、現段階ではなんでもいいです。「なんとなくカビ臭い」でも、ダメモトで挙げましょう。)、市役所の地域総務課に行ってください。
そして、市役所の地域総務課に行って、「やむを得ず解体」に当たりそうか否かを確認してください。もし、当たりそうとなれば、解体か修理かを、じっくり考えてください。その場で被災者生活再建支援金を申し込む必要はなく、持ち帰って検討しても構わないのです。
もし、「やむを得ず解体」に当たりそうにないとなれば、どのように修理をするか、応急修理制度を利用して修理をするか否かをご検討いただくと良いでしょう。
いずれにせよ、半壊以上であれば、修理だけが選択肢ではないということを、ご承知おきください。